連立与党が過半数割れという結果に終わった先の衆議院議員選挙。“少数与党”で行われる今後の国会運営においてキャスティングボードを握るとされるのが、議席数を4倍に増やした国民民主党だ。突如としてキーマンに躍り出た同党と玉木雄一郎代表について、玉木氏本人に取材経験のあるジャーナリストが見解を語った。
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旧民進党時代の2016年、同党の代表選に出馬した玉木氏を取材したというノンフィクションライターの石戸諭氏は、玉木氏について「当時から一貫しているのは、玉木さんが“本気で中道(の層)を取りに行く”ことを狙っていたこと。今回も『手取りを増やす』ことをキャッチフレーズとしていたが、やはり中道・中間層(の支持)をどうやったら掘り起こせるかを考えてきた上でメッセージを打ち出していた。経済政策を当時(旧民進党時代)からしっかり練り上げて、変えるべきところを良い方向に変えてきた」と評価する。
加えて、「国民民主党の政策が“体系的かつ合理的”だったことが1つのポイント。例えば、『こういう方法で手取りを増やします』という説明は他の政党に比べて説得的だったことが票につながったのではないか。これから争点となってくる『103万円の年収の壁を突破して178万円まで上げる』ことで7〜8兆円の税収が減るといった試算も出ているけど、実質的にはその分の減税になり、手取りに跳ね返る。これは特に現役世代の中間層にとっては明らかなプラスだ。さらに財政出動もしっかりやって、労働供給の好転から高圧経済を目指しますと、いろんな面で合理的な政策を練っている。中間層を狙っていくために経済にフォーカスしていくという考えは(当時から)変わっていないが、政策は体系的になった」と石戸氏は分析している。
今後の政局において、まず争点となるのが国会で議員によって内閣総理大臣を指名する「首班指名」だ。玉木氏を含む国民民主党の議員は「玉木氏を指名する」と党が方針を表明しているが、野党からは「(実質的な)石破総理誕生を許すのか」という批判もある。
こうした状況について石戸氏は「国民民主党と玉木氏に用意された道は3つ。1つは事実上の『死に票』でいいと割り切ること。首班指名で玉木氏と書いたり、棄権したりする行為は意味がない投票になってしまう。2つ目は自民党の石破氏に投票するパターンで、3つ目は立憲民主党の野田氏に投票するパターン。どの道を選択しても確実に批判は出る。おそらく今の国民民主は玉木氏に投票し、死に票にするパターンが一番批判によるダメージが少ないと考えているのではないか。ただし、それが本当に最小限のダメージに転ぶかはわからない」と予測した。
さらに石戸氏は、国民民主党と玉木氏は「今が“一番強気に出られる”状況だ」とも語る。
「例えば、今後自民党が無所属で当選した旧自民党議員を追加公認するといった措置をとった場合、議席は少しずつ増えていく。自民党は過去にも他党の議員を会派に引き込む“一本釣り”をしてきた歴史がある。数合わせであっても与党で過半数に達した時点で、途端に国民民主党は用済みになってしまう。自民党が与党過半数を回復しさえすればいいわけであって、維新が軌道修正すればそっちに流れてもいい。この先、どこまで強気に出られる状況が続くかはわからない」
選挙において有権者から厳しい審判を下された自民党だが、「そうは言っても第一党になったのは事実。(政治とカネの問題があっても)それなりに選挙では強かったという見方もできて、議員にもよるが、他党から自民党へ移るメリットがあると考えることはおかしなことではない。自民党がそうした議員の一本釣り戦略をとらない保証はどこにもない」と石戸氏は話す。
今後の動きが注目される玉木氏だが、一方で、同党の効果的な施策としてたびたび取り上げられるSNS戦略については、「切り抜き動画自体は他党もそれなりにやっており、重要なのは載せるべきメッセージがあったかどうか。そのメッセージとはやはり“政策”であり、国民民主党には切り抜かれるにふさわしいメッセージがあった」と分析した。
では、経済以外の政策はどうか。石戸氏は「例えば同性婚や選択的夫婦別姓などの政策は、自民党政権下で進むとは思えない。今回の選挙では自民保守派の議員も多く当選しており、自民党にとっては党を割るか否かという議論になってしまう。そこから手をつけるよりは、まずは合意しやすい経済政策からになるのでは」と持論を述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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