防衛省は、アメリカ製の装備品を調達する際にFMS=対外有償軍事援助という制度を利用していて、ドル建てで支払うため為替変動の影響を受けます。

政府は、おととし、国家安全保障戦略など安全保障関連の3つの文書を閣議決定し、昨年度から5年間の防衛費の総額を前の中期防衛力整備計画のおよそ1.6倍の43兆円程度と定めていて、会計検査院は、6日に提出した昨年度の決算検査報告書の中で、急速に増えた防衛費への円安の影響の試算を明らかにしました。

それによりますと、昨年度支払った、アメリカ製の装備品などの調達費は、57億8692万ドルでした。

支払時のレート1ドル137円で計算すると7928億円余りで、契約時に財務省が決めたレートより1ドル当たり30円程度円安が進んだため、1239億円余り負担が増えていました。

今回、会計検査院は初めて防衛費全体を検査し、「後年度負担」の増加によって防衛予算の硬直化につながるおそれがあると指摘しました。

戦闘機などの防衛装備品は、高額で、製造に時間がかかるうえ、価格を下げるため一定数まとめて調達する必要性もあることなどから、複数年に分割して支払うことが多くなり、会計法の上限の2倍の最大10年までの分割が特別に認められています。

1年間に新たに生じた「後年度負担」は、年間2兆円ほどでしたが、昨年度は調達額の増加に伴って3倍の6兆8000億円余りに膨れ上がっていました。

防衛省は、「防衛費は総額が決まっており、後年度負担が際限なく増えていくことはない。総額の範囲内で防衛力強化を図っていく」としています。

専門家「可能な範囲で幅広にリスク分析を」

国の会計実務に詳しい元会計検査院局長の有川博さんは、「特定の行政分野でこれだけ予算の増加が図られることはあまりないので、適切な執行管理や情報開示が行われているかを確認してなされた今回の問題提起はあってしかるべきだと思う」と指摘しました。

そのうえで、「為替変動のリスクは予測が難しいかもしれないが、後年度負担のリスクはある程度分析してマネジメントすることができるので、可能な範囲で幅広にリスクを分析し、予算が硬直化して他の分野にしわ寄せがいかないよう、事前の対策をとっておくことが必要だ」と話していました。

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