10月27日に投開票された衆院選の兵庫9区で、明石市の泉房穂前市長の後継、丸谷聡子氏が自民党派閥裏金事件を受けて非公認で戦い当選した西村康稔・元経済産業相の応援でマイクを握ったことが波紋を呼んでいる。丸谷氏にとって自民は前回市長選で推薦候補と争った「旧敵」だが、泉氏の支援で当選した市議らは立憲新人を応援し、仲間とたもとを分かつ形に。議会対応のみならず、国への要望活動にも影響が出そうだ。【入江直樹】
前明石市長派と亀裂「説明ない」
開票日前夜、JR明石駅前で西村陣営が開いたマイク納め。ひときわ大きな拍手で迎えられた丸谷氏は、中学校でしか実現していない給食無償化に触れ「(西村氏は)必ず無料化をすると言ってくれた。国の財源でやってもらえるともっと市民のための施策ができる。国で再び働いてもらいたい」と声高に訴えた。
数十メートル離れた場所では「泉氏の弟子」を自認した立憲新人、橋本慧悟(けいご)氏も演説をしていたが一瞥(いちべつ)もしなかった。
選挙期間中は複数回、西村氏の集会や街頭演説で熱弁を振るった。その動画は陣営のSNS(ネット交流サービス)を通じて拡散。市民らから「橋本さんを応援しないの?」「政策を進めるなら自民の協力は必要だ」などと賛否が寄せられた。
丸谷氏は取材に、2023年4月の市長選後、西村氏から「市長のやりたいことを実現するため協力する」と声をかけられたことを明かした。財務省や子ども家庭庁などへの要望活動を調整してもらったこともあったという。「日ごろお世話になっている現職。(応援は)市民目線のまちづくりを進めるために大事なことだ」と言い切る。橋本氏からは「(出馬の)相談も応援要請もなかった」とした。
西村氏も当選翌日、記者会見で「(市長は)当選以来、何度も東京に来られ、いくつか仕事の手伝いをさせてもらった。関係は良好だ」と蜜月ぶりを強調した。そして「高齢者や子育て世代に優しいまちづくりなど自分も強い思いを持っているので応援したい」と連携を続けていく考えを示した。
泉市政は暴言問題などを巡り、自民をはじめ主要会派と対立して混乱した。泉派の議員5人でつくる会派「市民の会」はその後継の丸谷氏を「与党」として支えてきた。中川夏望(なつみ)副幹事長は丸谷氏の行動について「(橋本氏の)応援をできないにしろ、せめて事前の説明はほしかった」と苦言を呈し、今後の会派の対応は「是々非々で臨む」と厳しい姿勢を見せた。
一方、丸谷氏による西村氏への「接近」について、自民市議の1人は「泉氏の支援が期待できない中、西村氏に借りをつくっておけば対抗馬を立てられないと思ったはず」と、次期市長選への思惑があるとみる。だが「泉氏の後継には変わりない。市議団としては勝てる候補を立てるべく準備を進めていくことになるのでは」と語った。
丸谷氏は市長選への画策について否定した上で「無所属市民派の市長であることは変わらない。批判はあるかもしれないが、市長としての務めは今後も果たしていくのでそれを見てほしい」と語った。比例で復活当選した橋本氏には「明石(のこと)で連携してもらえるなら力になってほしい」と呼びかける。
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