自民党の現職議員が2代続けて東京地検特捜部に逮捕、起訴された衆院東京15区の補欠選挙は28日に投開票日を迎えたが、政治不信の高まりで投票率は21・62%(午後6時現在)と低調だった。過去最多の野党系候補9人が乱立し、「政治とカネ」の問題で与党批判を連呼。加えて、ある陣営は別の候補者の隣で大音量で演説するなどし、「選挙妨害では」などの批判も出た。異例の事態に振り回された有権者は、今回の選挙戦をどうみたのか。
「きれいごとばかり」
「もういい加減にしてほしいと思う。怒りしかないし、政治に対して期待したいことはない」。
東京15区の区域である東京都江東区の会社員、大崎俊秀さん(61)は、自民派閥パーティー収入不記載事件で政治不信が高まる中、当選者が汚職事件、選挙買収事件と2代続けて金銭絡みで議員辞職した同区の現状について、こう憤る。
自民党が公認候補を立てなかった同区の補選では、各陣営の野党幹部らが続々と応援に入ったが、地元となじみの薄い候補者も多かった。
会社員の川崎久佳さん(65)は「候補者の公約を見ても、結局みんな同じようなことを言っているので選びにくかった」と振り返る。水産仲卸会社を経営する小林俊夫さん(52)も「消去法でやっていくと候補者が全部消えてしまう。応援したい人は正直いない。なるべくまともな人に票を入れたつもりだが…」と表情を曇らせた。
男性会社員(58)は「50年以上江東区に住んでいるが、投票先を決めるのがこれだけ難しい選挙はなかった」と吐露。無職男性(82)は「演説を聞いても、きれいごとばかりを言っている候補が多かった」と断じた。
「規制した方がいい」
さらに今回の選挙戦では、ある陣営が他の候補者の演説場所で大声を上げ、選挙カーで追いかけ回すなどの行為を繰り返し、街頭演説の事前告知ができない状況も発生。松本剛明総務相が、公選法の自由妨害罪や刑法の暴行罪などの処罰対象になり得ると述べるなど、大きな波紋を広げた。
そうした様子を目にした有権者の見方は、当然ながら厳しい。女性会社員(49)は「仕事帰りや買い物に行くと、誹謗(ひぼう)中傷や怒号が聞こえてきた。こういう選挙があっていいのかと思った。法規制した方がいいと思う」と話し、専業主婦の女性(62)も「モラルがなく、上品さに欠ける。平たくいうと下品だった」と切り捨てた。
一方で、今回初めて選挙権を得て一票を投じたという18歳の女子大学生は「少しでも江東区が良くなるようにと思って投票した」と話した。
9人の候補者がしのぎを削った東京15区。当選者は、18歳の思いに答えることができるのだろうか。
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