川勝平太静岡県知事の辞職に伴う県知事選(5月9日告示、同26日投開票)は、川勝氏が静岡工区の着工を認めなかったリニア中央新幹線への対応が焦点だ。特に地質や地下水の状況を確認するボーリング調査は各陣営の姿勢を確認する「試金石」(国土交通省幹部)と注目される。本来は着工に賛成でも反対でも必要な調査だが、川勝氏はそれすら拒否していただけに、現実的な対応に転換できるかが問われる。
静岡県知事選は元副知事の大村慎一氏と元浜松市長の鈴木康友氏がいずれもリニア「推進」を強調している。ただ、大村氏は「対話」による解決を訴えるも具体策は示しておらず、鈴木氏は「環境との両立を図る」と川勝氏も使った表現を主張するなど態度が明確ではなく、ボーリング調査に対する考え方が今後の争点になる可能性がある。共産党の森大介氏はリニア整備に反対の姿勢だ。
影響最小化に重要
リニアを巡って川勝氏とJR東海の溝が深まったのは、静岡県内で生活用水になっている大井川の流量を巡る問題がきっかけだ。川勝氏は上流の南アルプスでトンネルを建設する際に、湧水が発生し、約60万人分の生活用水が減ると反発した。
JR東海は、南アルプスの地下の状況を調べるため、昨年2月からボーリングで山梨県内を静岡県境に向かって掘削している。現在は県境まで459メートルの地点に達した。
県境付近の地下には水分を含みやすい破砕帯があるとされ、ボーリングでは地下水の流出量から地質や水の分布を調べている。トンネル建設中の水没事故を防ぐために不可欠で、流量の減少を懸念する住民の不安解消にもつながる。国の有識者会議は提言の中で、環境への影響を最小化するために重要な作業とした。
川勝氏は断固反対
当初は水問題を懸念していた流域の市町も調査の必要性を認識し、今年2月に同県島田市の染谷絹代市長が「流域の総意として早く着実に進めてほしい」と語っていた。
だが、川勝氏はボーリングで掘った穴から「静岡の地下水」が山梨側に流れ、湧き水として流出すると懸念。静岡側どころか山梨側の県境まで300メートル地点で調査の中断を求め、山梨県から〝越権行為〟を非難された。国交省幹部は「『水が出たらどうしよう』ではなく、『水が出たら対策はどうするのか』を考えた方が建設的だ」と話す。(福田涼太郎)
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