自民党は21日、政治改革本部の総会を党本部で開き、政治資金規正法の再改正に向けた党の改革案を大筋で了承した。政党から政治家個人に支出され、使途公開の義務がなかった「政策活動費」の廃止や政治資金をチェックする第三者機関の設置を明記した。自民は、28日召集の臨時国会で規正法を再改正し、政治不信の払拭(ふっしょく)を図りたい考えだが、立憲民主党など多くの野党が求める企業・団体献金の禁止には踏み込まなかった。
石破茂首相は会合の冒頭、「我が党が率先して(政治改革の)答えを出していきたい。年内の政治資金規正法の再改正等の実現に向けて議論してほしい」と呼びかけた。
会合には約90人が出席。約2時間の議論を経て、渡海紀三朗本部長に対応が一任された。自民は、各党に政治改革の与野党協議を呼びかけており、近く初会合が開かれる見通しだ。
改革案は「政治資金規正法の再改正に向けた基本的考え方」と題し、自民が年間10億円規模で党幹部らに支出してきた政策活動費については「法律上廃止」と明記した。ただし外交や企業の営業上の秘密に関わる支出などについては、第三者機関によるチェックを経て使途を非公開とできるよう「公開方法を工夫する」とした。
渡海氏は会合後、非公開の支出が温存される懸念について「政党としては公の機関(第三者機関)にちゃんと公開した上で、相手方のプライバシーを守る」と理解を求めた。ただ、連立を組む公明からも「また抜け穴になる」(党幹部)と問題視する意見が上がっており、与野党協議で争点となる見通しだ。
第三者機関は、国会への設置を基本としつつ「行政に置くことも視野に入れて検討する」と含みを残した。公明は第三者機関について、独立性と権限の強い行政機関として設置する案をまとめている。
外国人による政治資金パーティー券購入を禁止し、国会議員が政治資金規正法違反などで起訴された場合は政党交付金の支払いを停止するとした。政治資金収支報告書の透明性を高めるため、データベース化を図ることも明記した。
一方、立憲などが主張している企業・団体献金の禁止については盛り込まなかった。首相は会合後、記者団に「各党で考え方に一致をみていない。私が予断を持って申し上げるべきではない。これから先いろいろな議論が各党間で行われる」と述べるにとどめた。
自民の政治資金団体「国民政治協会」への2022年の企業・団体献金は約24億5000万円に上る。党内には廃止への慎重論が強く、「企業・団体も社会を構成する一員で、個人と同様に憲法で保障されている政治活動の自由が認められている」(森山裕幹事長)との立場をとっている。【高橋祐貴、園部仁史】
自民党の政治改革案ポイント
○政策活動費 法律上廃止するが外交関連などは引き続き使途非公開。非公開分は第三者機関が監査
○第三者機関 国会設置を基本としつつ行政設置の選択肢も残す
○政治資金パーティー 外国人などによるパーティー券購入を禁止
○政党交付金 国会議員が政治資金規正法違反などで起訴された場合、政党への交付を一部停止
○個人献金の税優遇 政治家が政党支部に個人献金して税優遇を受けることを禁止
○企業・団体献金 禁止に踏み込まず
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