石破茂首相は自民、公明両党の与党が衆院で過半数割れした後、初めての本格論戦となる28日からの臨時国会に臨む。少数与党は1994年の羽田孜内閣以来で、法律や予算の成立には野党の協力が必要となる。与党は強行採決など強引な国会運営ができなくなり、与野党の熟議で幅広い民意をくんだ政策立案につながるとの期待もある。同志社大の吉田徹教授(比較政治学)に新しい国会の展望を聞いた。(川田篤志)

◆不安定ではあるが「政策協議が深まるなら歓迎すべき状況」

 —自公は、政策ごとに国民民主党などに協力を仰がざるを得なくなった。

同志社大の吉田徹教授(本人提供)

 「野党は自分たちの政策を与党になるべくのませるよう交渉し、与党は妥協しつつ自分たちも実現したい政策とあわせのむ形が続くだろう。野党との協議が決裂した場合、内閣不信任決議案を出される可能性が高く、野党が結束できれば倒閣も容易となる。与党は国民民主と折衝してダメなら日本維新の会に依存するだろうが、交渉に時間がかかる上、予算委員長ポストを立憲民主党が取り、国会日程でも弱みを握られた。盤石な連立政権と比べ不安定になるのは避けられない」  —この状況は続くか。  「国民民主は自民や他の野党と差異化を図りつつ、政策ごとに協議するやり方を少なくとも来年夏の参院選まで続けるだろう。そこまでは緊張感を持った国会運営になる。政策協議が深まるなら歓迎すべき状況だ」

◆世界的には「第1党が単独過半数を得られないことは珍しくない」

 —日本では少数与党となるのは30年ぶりだ。  「日本は大政党に有利な小選挙区と多党化を促す比例代表の並立制で、どちらにも比重を置かずに中間を取るのは世界でも珍しい。そこで比例票を国民民主が大きく伸ばした影響は大きい。革新的な共産党、新自由主義的な維新、野党の中では中道寄りの立民で、それぞれ政策が異なる部分もあり、共闘が成立しなかったため政権交代にまで至らなかった」  —少数与党は世界的にも珍しいのか。  「言語や宗教などで対立軸が分極化している欧州ではドイツやデンマーク、スウェーデンなど選挙で第1党が単独過半数を得られないことは珍しくない。少数与党は比例代表制に軸足を置く選挙制度を採用する国に多く、選挙後に連立交渉する流れが定着している」  —二大政党制と多党制のどちらがいいのか。  「安定した政権ができやすい二大政党制と、さまざまな民意を代表できる多党制はどちらにも善しあしがある。完璧な制度はない。日本の新しい政治状況は民意の結果で、それを奇貨として、より良い政策、革新をどのように実現するかに関心を向けるべきだ」

 吉田徹(よしだ・とおる) 北海道大教授などを経て現職。東京大総合文化研究科博士課程修了。49歳。

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