「佐渡島の金山」追悼式で、参加を見送った韓国政府代表者らの席=24日午後、新潟県佐渡市

韓国政府が新潟県佐渡市で24日に開いた世界文化遺産「佐渡島(さど)の金山」の追悼式への参加を見送ったことは改善傾向を強める日韓関係に冷や水を浴びせた。両国間に歴史問題がしこりとして残り、双方の政府が慎重に扱う必要性を印象づけた。

追悼式への出席を予定していた韓国の政府や遺族の代表は直前になってとりやめた。韓国メディアは日本政府代表として出席した生稲晃子外務政務官が2022年8月15日に靖国神社を参拝したと報じ、韓国側が欠席した理由の一つとの見方を示した。

林芳正官房長官は25日の記者会見で韓国側の不参加について「残念だ」と語った。生稲氏は24日、記者団に「(22年の)参院議員就任後は参拝していない」と述べた。

佐渡金山の追悼式は岸田文雄前政権から日本政府が進めてきた韓国との関係改善を象徴する行事だった。韓国は当初、日本が手続きを進めてきた佐渡金山の世界遺産への登録をめぐり朝鮮半島出身者の強制労働があったとして反発していた。

日本側が韓国や国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の求める措置を受け入れたことが7月の登録の決定につながった。

その一つが朝鮮半島出身者を含む労働者の追悼式典を現地で開催することだった。佐渡市内の博物館で労働者に関する展示を設置することも韓国の譲歩を引き出した。

韓国政府が追悼式への参加を見送ったのは、野党や一部世論の批判が尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権に直撃するのを避けたかったためだ。

日本の外務省が22日、生稲氏が追悼式に出席することを発表すると、韓国メディアは同氏の靖国参拝歴を大きく報じた。聯合ニュースは「韓国外務省が事前に知らなかったものとみられ、無能な外交能力を叱責する声が出ている」と伝えた。

尹政権は安全保障上の日米韓3カ国の協力を重視し日本との関係改善を進めてきた。足元では自身や夫人にかけられたスキャンダルが重荷となり、政権の体力が弱まっている。韓国ギャラップによると尹氏の支持率は20%前後まで低下した。

尹氏は元徴用工問題で1965年の日韓請求権協定で解決済みという日本政府の立場を受け入れ、岸田前首相との関係構築を優先した。一部の歴史学者や野党はこうした尹氏の認識を「日本寄り」だと攻撃していた。

尹氏の対日外交を評価してきた保守派の支持層も足元で離れ始めており、保守系与党としては日本との関係をめぐり政権への攻撃材料が増える事態を懸念する。

与党「国民の力」の秋慶鎬(チュ・ギョンホ)院内総務は25日、追悼式の問題について「日本政府は尹政権発足後、久しぶりにつくられた韓日の友好ムードを揺さぶってはならない」とクギを刺し、関係維持に向けた日本側の慎重な対処を促した。

静岡県立大の奥薗秀樹教授は「事前の外交当局間のやりとりで回避することは十分できたはずだ」と指摘する。日韓は25年に国交正常化60年を迎える。今回の韓国側の追悼式への欠席が関係改善の流れに大きく影響するとの見方は少ない。

奥薗氏は「全体の流れを害することがないように外交当局間で胸襟を開いて互いに振り返っておくべきだ」とも強調した。

日韓議員連盟の会長を務める菅義偉元首相は25日、国会内で訪日中の韓日議員連盟の幹部と会談した。両議連は12月中旬にソウルで合同総会を開く予定だ。

(馬場加奈、ソウル=甲原潤之介)

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