29日の外国為替市場は1ドル=160円台まで円安に振れた後、対ドルで6円近い急速な円高に転じるなど、円相場は乱高下する荒れた展開となった。円相場が急落する中、政府・日本銀行が為替介入を実施したかどうかを公表しない「覆面介入」に踏み切った可能性もある。ただ、円安の背景には、高金利で運用に有利なドルを買い、円を売る日米金利差の問題があり、打てる手は乏しいのが現実だ。
日本時間の29日に160円台を付けた後の急速な円高進行について、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「為替介入が疑われる状況だ」と話す。政府が為替介入の有無を明らかにしていない中で、断定することはできないが、可能性は比較的高いと指摘する。
ただ、為替介入を行っていたとしても時間稼ぎにしかならないというのが一般的な見方だ。木内氏も「早晩1ドル=160円を超える円安が定着する」と予想する。
足元で円安が急速に進んだのは、26日の日銀の金融政策決定会合がきっかけだ。現状の金融緩和策の維持が決まり、植田和男総裁の記者会見でも円安進行への対応に具体的な言及がなく、会見中に一時1ドル=157円台を付ける場面もあった。
海外市場でもその流れを受ける形で円安傾向が続き、日本が祝日で取引が薄い29日に円売りの動きが一気に進んだ形だ。木内氏は「東京市場が祝日で為替介入の可能性が少ないとみて、ドル買い円売りを仕掛けやすい状況だった」と分析する。
円安傾向には経済界からも懸念の声が強まっている。円安要因の日米の金利差を縮小するには、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げと日銀の利上げが必要だが、米国はインフレの長期化で利下げ開始が見通せない。日本も追加利上げは住宅ローンや企業の借り入れの金利に影響し、景気を冷やすリスクもあり難しい判断となる。
(永田岳彦)
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