岸田文雄首相は3日、訪問先のブラジル首都ブラジリアでルラ大統領と会談する。気候変動や環境、脱炭素などで2国間の協力を深化させる「グリーン・パートナーシップ・イニシアチブ」の立ち上げで合意する見通し。ブラジルで普及する植物由来のバイオ燃料と、日本が強みを持つハイブリッド技術の普及に向けた連携枠組みの創設も調整する。
ブラジルは今年の主要20カ国・地域(G20)、来年の国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)の議長国で、国際社会で存在感を強めている。「脱炭素」をキーワードにグローバルサウス(新興・途上国)の主要国であるブラジルの取り込みを図る。
首相とルラ氏の対面の会談は昨年5月以来、1年ぶり。日本の首相によるブラジル訪問は8年ぶりとなる。
日本はルラ政権が重視する環境問題を支援することで、「自由で開かれた国際秩序」の維持・強化や経済成長を推進。中南米への関与で先行する中国への巻き返しを図りたい考えだ。
首相は会談で、熱帯雨林保護を目的にブラジル政府が運用する「アマゾン基金」にアジアで初めて300万ドル(約4億6000万円)を拠出したことを表明。焼き畑農業で荒れた農地の改良や、日本が得意とする地球観測データの利用を通じて、大洋州諸国の環境・農業問題に共に貢献する協力事業を調整する。
また、ブラジルはサトウキビなどを原料とするバイオ燃料で走る車両が普及している。ハイブリッドエンジンや水素などを燃料とする次世代航空機をはじめとした日本の技術を組み合わせることで経済成長と脱炭素の両立を目指す。今秋のG20サミットや来年のCOP30に向けて他国の賛同も呼びかける。
ウクライナや中東、東アジア情勢についても意見交換する。日本とブラジルは国連改革を訴える「G4」のメンバーで、ロシアによるウクライナ侵攻以降、機能不全が続く安全保障理事会改革の推進でも一致する見通しだ。
首脳会談には46社の日系企業・団体が同行。重要鉱物のサプライチェーン(供給網)強化などでも日ブラジル間の協力を加速させる。三井物産がブラジル東部のリチウム鉱山開発に出資するほか、サトウキビのかすからグリーンアンモニアや肥料を製造するスタートアップ企業の協業などで36件の覚書を結ぶ。【ブラジリア村尾哲】
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