自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、清和政策研究会(安倍派)の政治資金収支報告書にパーティー券収入のノルマ超過分に関する収支を記載しなかったとして、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた会計責任者兼事務局長の松本淳一郎被告(76)の初公判が10日、東京地裁で開かれる。安倍派の「金庫番」は法廷で何を語るのか。
一連の事件では、国会議員3人と、志帥会(二階派)、宏池会(岸田派)それぞれの会計責任者ら7人の計10人が立件されたが、正式裁判が開かれるのは初めて。松本被告は起訴内容を認めるとみられる。
起訴状によると、松本被告は2018~22年分の収支報告書に、収入と支出をそれぞれ計約6億7000万円少なく記載したとされる。
東京地検特捜部は23年12月、安倍派事務所を家宅捜索。パーティー券収入のノルマ超過分が派閥から議員にキックバック(還流)されたり、派閥への報告なしに事務所でプールされたりしていた疑いが浮上した。こうした資金は収支報告書に記載されず、多くが受領議員側で裏金化されていた実態が明らかになった。
ただ、残る謎も多い。2月に公表された安倍派議員に対する自民の聞き取り調査報告書は還流について「場合によっては20年以上前から行われていたこともうかがわれる」と指摘するにとどまった。誰の指示で何のために始めたのか、具体的には分かっていない。
22年4月には安倍晋三元首相の指示で還流中止が一旦は決まったものの、同7月に安倍氏が銃撃事件で死去した後に継続されることになった経緯も不明だ。同8月、安倍派の幹部が対応を複数回協議したとされる。政治倫理審査会で塩谷立元文部科学相は「今年に限って継続でしょうがないかなとなった」と証言し、西村康稔前経済産業相は「結論は出なかった」と述べ、食い違った。
松本被告は19年2月から安倍派の会計責任者を務めており、還流継続の経緯を知る立場にあったとみられる。公判でどのような説明をするか、注目される。【井口慎太郎】
無罪主張か、起訴内容認めるか焦点
事件では自民党の議員や秘書ら計10人が立件され、松本淳一郎被告を含めて6人が被告として法廷に立つ。無罪を訴えるのか、それとも起訴内容を認めるか、対応が分かれそうだ。
いずれも安倍派に所属していた参院議員の大野泰正被告(64)=岐阜選挙区、自民を離党=は2018年からの5年間で約5100万円、衆院議員の池田佳隆被告(57)=比例東海、自民を除名=は約4800万円の不記載があったとして起訴された。初公判は未定だが、大野議員は捜査段階で容疑を否認し、池田議員は黙秘していたとされ、公判でも無罪主張を維持するかが焦点となる。
また、両議員の秘書と、志帥会(二階派)の元会計責任者、永井等被告(70)も正式裁判が開かれる。永井被告は6月19日に予定されている初公判で、起訴内容を認めるとみられる。
一方、安倍派に所属していた谷川弥一元衆院議員(82)=長崎3区、議員辞職=ら4人は略式起訴され、既に有罪が確定している。【安元久美子】
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