大臣は水俣病問題を軽視しているのではないか――。水俣病犠牲者慰霊式後の懇談で環境省職員がマイクの音声を切った問題。8日に熊本県水俣市内で記者会見した被害者団体のメンバーからは、伊藤信太郎環境相の責任を問う声が相次いだ。伊藤環境相は同日、熊本を訪れて被害者らに直接謝罪したが、地元には根深い不信が残った。【中村敦茂】
発言打ち切りは、1日にあった慰霊式の後に開かれた被害者団体と伊藤環境相との懇談の場で起きた。持ち時間3分を超過した団体に対し「時間なのでまとめてください」と職員が話を遮ったり、マイクの音を切ったりした。
当時の会場では、大臣が被害者の声に耳を傾けるよう抗議する声も上がった。伊藤環境相は当初「マイクを切った認識はない」としていたが、被害者の怒りが噴出した8日に一転して姿勢を変え「マイクを切ったことは大変遺憾。深くおわび申し上げる」と謝罪。昼に東京で報道陣の取材に応じた後、熊本を訪問し、同日夕に被害者らに直接謝罪した。林芳正官房長官も衆院内閣委員会で「政府としておわび申し上げたい」と述べた。
会見は直接謝罪に先立ち開かれた。「水俣病被害者互助会」の谷洋一事務局長は「環境省が被害者の実情に向き合っていないからこそ、発言時間が制限された。事務方がマイクを切るなんて考えもしなかった」と当日を振り返った。その上で「まともに水俣病問題に取り組まず、セレモニーとして大臣との対話が設定されている。ごまかしの対応をしないでほしい」と訴えた。
「公害の原点」といわれる水俣病は、2004年に被害拡大を防がなかった国や県の責任を認める最高裁判決が出ている。会見の出席者からは「環境大臣自身が水俣病を軽視している」「大臣は辞任すべき」などと水俣病と向き合うべき省庁のトップに対し、厳しい声が相次いだ。
「水俣病被害者の会」の中山裕二事務局長は「あの場にいたすべての団体の代表、すべての水俣病被害者に対する上から目線の運営であったし、不信を招いた。きちんと謝罪すべきだ」と語った。
当日は木村敬・熊本県知事も懇談に同席した。木村知事は8日、伊藤環境相の水俣訪問について「水俣病問題に真摯(しんし)に向き合っておられることの表れ。懇談が実りある場になるよう、環境省において運営の改善をお願いしたい」などとするコメントを出した。
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