顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に関する自民党のプロジェクトチーム(PT)は13日、対策強化の提言案をまとめた。従業員保護策を企業に義務付ける法整備に言及した。厚生労働省はこれを踏まえ法改正を調整する。
提言案は対策強化にあたり、正当なクレームと線引きするためにカスハラに該当する範囲が明確になるよう定義することを求めた。代表的な事例を整理して周知する必要性を提唱した。
企業側の対応を巡っては「就業環境が害されないよう雇用管理上の必要な措置を義務付ける法整備なども念頭に労働者保護対策を強化することが必要だ」と記した。消費者の権利抑制にならないよう留意して検討すべきだとも訴えた。
カスハラを予防するための顧客対応に関する従業員研修の強化や、消費者の権利と責任について理解を促す教育の必要性にも触れた。
厚労省は自民党の提言を受け、6月にもまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)への反映をめざす。今夏をめどに労働施策総合推進法にカスハラ対策を盛り込む場合の論点を詰める。
同法は2019年の改正で企業にパワハラ防止措置を講じるよう義務付けた。セクハラやマタハラは男女雇用機会均等法で規制している一方、カスハラには法律上の規制はない。
法制化に向けてはカスハラの定義付けが論点となる。製品やサービスの不具合への指摘は品質改善のため企業にとっても有益だ。顧客の要求や手段の妥当性、職場に与える悪影響などを考慮して基準を設ける必要がある。
暴行や脅迫、理不尽な言動など従業員に損害を与える行為はカスハラに該当する可能性が高い。
自社の従業員が加害者となる場合が多いパワハラやセクハラは社内で啓発したり、問題を起こした人を減給や降格などで処分したりすることができる。社外の客が引き起こすカスハラは企業側が防ぎにくい面がある。
カスハラは深刻化している。小売りや外食などの労働組合がつくるUAゼンセンの24年の調査で2年以内にカスハラの被害にあった人は46.8%に上った。カスハラをした客の4分の3が男性で、9割が推定で40代以上だった。
対策の法整備は徐々に進んでいる。ホテルは23年の旅館業法改正でカスハラ客の宿泊を拒否できるようになった。国土交通省は23年の省令改正でタクシー・バス運転手の車内での氏名掲示義務を廃止した。
企業も毅然とした姿勢を示すようになってきた。JR東日本は「カスハラには対応しない」との方針を4月に公表した。タクシー大手の日本交通はカスハラ客に乗車拒否や慰謝料の請求をする可能性を示す。
人手不足の状況で企業は勤務先として選ばれるためにも職場環境の整備に迫られている。企業にとってはカスハラ対策の法整備が進めば理不尽な顧客から従業員を守りやすくなる。
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