自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて12日、衆院に続いて参院でも「政治改革特別委員会」を設置した。岸田文雄首相は政治資金規正法改正をはじめ、今国会での改革実現に意欲を示す。だが自民党内で首相の責任を問う声もあり、自前の改正原案すら作れていない。抜本改革を求める他党との隔たりは大きい。(近藤統義、井上峻輔)

自民党本部

◆「実態解明がまだなのに…」

 自民党の政治刷新本部は12日に法改正に向けた作業部会を開いた。首相の指示を踏まえ(1)政治家の罰則強化(2)第三者による政治資金の監査徹底(3)デジタル化による透明性向上―の3点を検討したが、具体案はまとめなかった。鈴木馨祐座長は終了後、来週にも公明党と改正案の協議を始める方針を示した上で「協議前に自民案は固めない」と語った。  出席者によると、会合では「実態解明が不完全なのに議論のしようがない」「首相の責任はどうなのか」といった意見も出た。

◆首相指示の3点、与野党で食い違いなし

 もっとも首相が指示した3点は与野党で食い違いはない。「罰則強化」の軸となるのは、会計責任者とともに議員本人も処罰対象とする連座制の導入だが、どのような違反行為を対象にするのかなど細部で意見が割れる可能性はある。  「監査の徹底」では、第三者機関の設置を求める意見が強い。現行の監査制度は国会議員関係の政治団体の支出のみの点検にとどまっているため、監査対象を他の政治団体や収入に拡大する必要がある。  政治資金の流れをチェックしやすくするため、アナログな収支報告からの脱却も急務。多くが紙で提出される報告書を電子化し、検索できるようにルール化する案がある。

◆企業献金を禁止しては?「寄付の自由がある」

 一方、資金の集め方に直結する論点では自民の及び腰が際立つ。野党が禁止を訴える企業・団体献金は、税金で賄われる政党交付金との二重取りや、政策決定をゆがめる恐れへの指摘が根強い。だが、多額の献金を集める自民は「企業は寄付の自由を有する」と取り合わない。  事実上の企業献金の受け皿となっている政治資金パーティーも、自民が現時点で打ち出すのは派閥開催の禁止だけ。議員個人も含む全面廃止や企業・団体のパーティー券購入禁止に踏み込むかは見通せない。  二階俊博元幹事長が現職時代の5年間に約50億円を受け取っていたことで問題が露呈した政策活動費についても、他党は廃止や使途公開を求めているが、自民の抵抗は強い。

 今国会の会期末までは2カ月超で、残された議論の時間は多くない。鈴木座長は9日のBS番組で「一気にやるのは時間的にも大変」と話し、部分的な改正で終わらせる予防線を張った。「抜け穴」を残す対策で終われば、国民の政治不信はさらに深まりかねない。 

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