エネルギー基本計画 エネルギー政策の中長期的な方向性を示す国の指針。エネルギー政策基本法に基づいている。2003年10月に最初の計画が閣議決定された。およそ3年ごとに見直され、政府が目標に掲げる50年までの温室効果ガス排出ゼロを踏まえた電源構成などが示される。21年10月に閣議決定された現行の第6次計画では火力41%、再生可能エネルギー36〜38%、原発20〜22%、水素・アンモニア1%。
◆資源エネルギー庁「バランスのとれた委員構成だ」と反論
岸田文雄首相=15日、千葉一成撮影
エネ基は3年をめどに改定。政府は新計画を本年度内に決める方針を示している。初日から「大量の電気を安定供給できる」(黒崎健・京都大複合原子力科学研究所所長)など、原発の再稼働や新増設を求める声が相次いだ。欠席した委員の杉本達治・福井県知事も「将来の原子力の必要な規模とその確保に向けた道筋など原子力の将来像をより明確にする必要がある」との意見書を出した。 議論の行方に影響する委員構成を巡っては、原発推進の委員に偏っているとの指摘があり、若者らでつくる環境活動団体が15日、経産省前で多様な意見を取り入れるよう訴えた。これに対し、資源エネルギー庁の担当者は「幅広いテーマを審議するのにふさわしい学識経験者や専門家が参加している。バランスのとれた委員構成だ」と反論した。◆現行計画「原発依存度は低減」 → 岸田政権「最大限活用」
2021年10月に策定した現行計画では、30年度の電源構成の目標を示し、うち原発は20〜22%を占める。「可能な限り(原発)依存度を低減する」と明記し、増設やリプレース(建て替え)を進める文言は盛り込まれていない。 だが、21年10月に発足した岸田政権は現行計画を反故(ほご)にするかのように、11年の東日本大震災前の原発推進に回帰している。22年6月に閣議決定した政府の経済財政運営の指針「骨太方針」でも、原発事故後では初めて「最大限活用する」と明記した。 脱炭素社会実現に向けた産業転換などを議論する「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」では、首相自ら議長に就任。23年2月には、原発の60年超運転や次世代型原発への建て替えを柱とする基本方針を閣議決定した。 今回の見直し議論では、40年度を見据えた電源構成など原発の位置付け以外にも、二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力の扱い、再生可能エネルギーの推進、人工知能(AI)の普及に伴う電力需要の増加への対応も焦点。電力の安定供給と脱炭素をどう両立するかも大きな課題だ。 13日には、40年の脱炭素や産業政策の方向性を示す国家戦略「GX2040ビジョン」を年内にも策定すると発表。エネ基の改定と並行して、原発推進にお墨付きを与える懸念がある。 ◇ ◇◆「原発リスクの影響を長く受けるのは若者だ」環境団体が訴え
エネルギー基本計画(エネ基)の見直しが始まるのを受け、20〜30代を中心とした環境活動団体のメンバーらが15日、経済産業省前で、原発と化石燃料に依存した現行のエネルギー政策からの脱却を呼びかけた。経済産業省の前で声を上げる参加者たち=15日、東京・霞が関で(木戸佑撮影)
参加者は、分科会委員の大半が原発を推進する立場であると批判。「気候変動や原発リスクの影響を長く受けるのは高齢世代より若者だ」と、若者や女性、原発被災者らの声も聞くべきだと訴えた。 また分科会開催が直前に公表されたことに「関係者だけで決めようとしているのでは」と批判。「安全な未来のため、原発や化石燃料でもうかる世の中を変えよう」と周囲に訴えた。 デモを呼びかけた環境団体「350.orgジャパン」の伊与田昌慶さん(37)は「暮らしや環境に直結する大事な会議なのに、世の中の反応が薄い。再生可能エネルギーへの本気の移行を求め、危機感を持って声を上げていきたい」と話した。(鈴木太郎)
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