自民党は16日から政治資金規正法の改正案の提出に向けた党内の手続きに入り、すべての所属議員を対象にした会合に続き、政務調査会の幹部が出席する「政調審議会」を開きました。

この中では、収支報告書に不記載などがあった場合、相当する額を国に寄付できるようにするとした条文について、出席者から「強制的に没収となる意味合いを出すべきだ」などと修正を求める意見が示されました。

このため、16日は法案の了承を見送り、17日に改めて協議することになりました。

【詳しく】自民党がまとめた改正案は

自民党がまとめた政治資金規正法の改正案は、議員本人への罰則を強化する、いわゆる「連座制」の導入が柱の一つとなります。

具体的には、議員に収支報告書の「確認書」の作成を義務づけ、会計責任者が不記載や虚偽記載で処罰された場合、議員が「確認書」を作成していなかったり、内容を確かめずに作成したりしていれば、50万円以下の罰金を科し公民権を停止するとしています。

また、収支報告書に不記載などがあった場合、相当する額を国に寄付できるようにするとしています。

一方、政治資金の透明性を向上させる方策として、外部監査を強化し、議員の政治団体の支出だけでなく収入も監査の対象に含めることや、議員に収支報告書のオンライン提出を義務づけることを盛り込んでいます。

そして、パーティー券の購入者を公開する基準額については、現在の「20万円を超える」から「10万円を超える」に引き下げるとしています。

さらに、パーティー券の現金での販売を禁止し、代金は口座振り込みとするとしています。

党から議員に支給される「政策活動費」については、支給を受けた議員が使いみちを項目ごとの金額で党に報告し、党が収支報告書に記載するなどとしています。

国会議員の政治団体の会計処理をめぐっては、議員側から年間で1000万円以上の資金を後援会など別の政治団体に移した場合、支出の公開基準を国会議員の団体と同様に厳格にするとしています。

法案は一部の規定を除いて再来年の1月1日から施行するとしています。

渡海政調会長「あす了承できるようにしたい」

会合のあと渡海政務調査会長は記者団に対し「きょうの段階では完全に納得が得られていないので、もう1回協議させてもらう。法案の方向性でもめているという話ではないので、丁寧に進め、あす了承できるようにしたい」と述べました。

岩屋元防衛相「丁寧に説明することが大事」

自民党の岩屋・元防衛大臣は記者団に対し「幅広い国民から物心両面で支えられてきているのが自民党だ。小手先の改革ではなく、自民党が政治資金の問題についてどういう考え方を持っているかを丁寧に説明することが大事だ」と述べました。

和田政宗参議院議員「もっと危機感を持ち厳しく律するべき」

和田政宗参議院議員は記者団に対し「私自身はパーティー券の公開基準は『全面公開』か『2万円超』とするよう提起し、他の出席者からも『透明性を高める中で厳しくやっていくべきだ』という意見がいくつも出た。自民党はもっと危機感を持ち、厳しく律するべきだ」と述べました。

公明 山口代表「自民・公明両党で力を合わせていきたい」

公明党の山口代表は党の中央幹事会で「パーティー券の購入者を公開する基準額など2つの項目については自民党と意見が分かれたが、衆参両院の政治改革特別委員会で活発な議論が行われて合意が形成され、最終的に今の国会で法改正が成し遂げられるよう、自民・公明両党で力を合わせていきたい」と述べました

立民 長妻政調会長「自民と公明の協議決裂 前代未聞のこと」

立憲民主党の長妻政務調査会長は記者会見で「自民党と公明党の協議が決裂するという、前代未聞のことが起こり、あすにも自民党が単独で法案を国会に提出するという非常に情けないことになった。自民党の案は、政治資金パーティーが抜け道になるのを全く防げない案だと言わざるをえず、非常にやる気がないことが明白で、顔を洗って出直してほしい。われわれは、抜け道のない案を用意しているので、どちらがいいのか、国民に聞いてみるのがいちばんだ」と述べました。

自民と立民 来週から法案審議で一致

自民党の浜田国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長は16日午前、国会内で会談し、政治資金規正法の改正に向けた審議日程を協議しました。

この中で浜田氏は、自民党は単独での法案提出に向けて党内の手続きを進め、17日決定する予定だと伝えました。

これに対し安住氏は立憲民主党も早期に法案を提出する方向だと説明し、両氏は来週から衆議院の政治改革を議論する特別委員会で法案の審議を始めることで一致しました。

また両氏は、政治とカネの問題などをテーマに岸田総理大臣に出席を求めて来週20日に衆議院予算委員会の集中審議を行うことで合意し、22日に参議院でも行う方向で調整することを確認しました。

自民 御法川国対委員長代理「できるだけ早く審議をスタート」

自民党の御法川国会対策委員長代理は記者団に対し、「立憲民主党の法案も来週早々には出てくるという話があり、特別委員会の現場を中心にやっていこうということになった。しっかり議論するためにできるだけ早く特別委員会の審議をスタートしようということだ」と述べました。

立民 安住国対委員長「自民に譲歩を迫るやり方も」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「自民党とは、来週半ばに政治改革特別委員会のスタートを切るため、お互いに調整を急ごうとなった。そこからは特別委員会は連日開催になる」と述べました。

そのうえで、法案の提出に向けた自民党の対応について「これだけの事件を起こしたわりには『改革していこう』ということや、『みずから正していこう』という姿勢やエネルギーが無いことが残念だ。公明党がどういう態度で委員会に臨むかわからないが、野党と一緒になり、自民党に譲歩を迫るやり方もあっていいのではないか。法案の行方がどういう経緯をたどるかはやってみないとわからない。今の自民党の案は大変不十分であり、そのまま譲歩してのっかることにはならない」と述べました。

維新 馬場代表 “『あとで抜け穴作る』意図感じる”

日本維新の会の馬場代表は記者会見で「自民党が提出する予定の法案は『とりあえず成立させて、あとで抜け穴をどんどん作っていこう』という意図が感じられる。特別委員会で、われわれと自民党の考え方のどちらが再発防止につながり、国民が求めることへの近道なのか世論に訴えていきたい」と述べました。

また、自民党から「調査研究広報滞在費」の使いみちや公開のあり方を議論する協議体を設ける方針が伝えられたことについて「遅きに失した。われわれが求めていることは簡単明瞭で、とにかく領収書の公開だ。今の国会中に結論を得ることを最優先に作業をしてもらいたい」と述べました。

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