リニア中央新幹線の実験線車両=山梨県都留市で2020年10月19日、梅田啓祐撮影

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で井戸などの水位が低下した問題で、静岡県知事選の主要候補の訴えに変化が生じている。リニア建設が抱えるリスクを強調したり、「推進」の主張を弱めたりするなど、26日の投開票まで1週間を切り、リニアを巡る対応に各候補は心を砕いている。【最上和喜、丹野恒一】

 主要候補で唯一、リニア反対を訴えていた共産党県委員長の森大介氏(55)=共産公認=は瑞浪市の問題にいち早く反応し、街頭演説の冒頭に盛り込んで各地を回る。18日、JR沼津駅前でマイクを握り、「(水位低下は)決して人ごとではない。必要性が損なわれ、問題山積のリニア建設にストップをかけたい」と力を込めた。その後、報道陣の取材に応じて「改めて工事の困難さが露呈した形になったと思う。水道水の9割を大井川に頼る掛川市でも『ああなっては困る』という声をたくさんいただいている」と手応えを口にした。

 リニア推進に前向きな前浜松市長の鈴木康友氏(66)=立憲、国民推薦=は16日、「命の水を守る」として島田市内で大井川を視察した。19日、沼津市での決起集会後には「水と環境の問題はないがしろにできず、現実的な解決策を見いだしながら進めていく」とこれまでの立場に変わりがないことを説明。応援に駆けつけた立憲民主党の泉健太代表も「水脈をどう守り通すか、住民との意見交換を重ねるべきだ」と同調した。ある陣営関係者は「岐阜の問題に関わらず、候補者のスタンスは変わらない。ブレるのはよくない」と明かした。

 一方、同じく推進派の元副知事の大村慎一氏(60)=自民推薦=は18日、掛川市内での演説で、フリップにあった「(リニアは)1年以内に結果を出す」の文言をシールで覆い「一旦ストップします」と表明。「基本線は前進」としつつ、JR東海が水位低下を岐阜県に3カ月間報告しなかったことに「地域の信頼を得るのは基本だ」と憤りをにじませた。ある自民県議は「(水位低下は)寝耳に水だったが、住民不安に寄り添うのが最優先。その上で、リニアによる経済活性化や災害時に果たす役割に目を向けてもらえるよう訴えていく」と話した。

 知事選は他に、政治団体代表の横山正文氏(56)▽不動産管理業の村上猛氏(73)▽会社社長の浜中都己氏(62)――の3人が立候補している。

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