鹿児島県知事選の告示まで1カ月を切った。2期目を目指す現職の塩田康一氏と、元自民党県議の米丸麻希子氏に加え、新たに名乗りをあげたのが、市民団体の共同代表を務める樋之口里花氏。選挙の前哨戦が熱を帯びる中、それぞれの動きを追った。
塩田康一氏
「一人一人のお力を私に賜りますようよろしくお願いを申し上げます」
2期目を目指す現職の塩田康一氏。5月12日、鹿児島市で事務所開きを行った。
会場には塩田氏の推薦を決めた自民党の国会議員や県議会議員に加え、4年前の前回選挙でほかの候補者を応援した人たちの姿も。
そして前回、塩田氏に敗れた三反園訓前知事も訪れたが、握手は交わしたものの目を合わせることはなかった。
このほか鹿児島県霧島市や奄美市など、各地で事務所を構え着々と地盤を固める塩田氏。
4年前はなかった組織によるサポートを本人も実感しているという。
塩田康一氏
「前回よりも応援したいという方が増えている感じがする」
公務の合間をぬって、週末を中心に各地を回り、1期4年の実績を強調する。
さらに、塩田氏が強みとするのが官僚時代に培った豊富な人脈だ。
塩田康一氏
「ちょうど同年代が各省庁に多いからそういうところにも行きながら、国からの予算を引っぱってくることも私の重要な役目であると思っている」
大型連休中に訪れたのは種子島。行動を共にしたのはー
自民党県連・森山裕会長
「この人が知事を引き続き務めれば鹿児島は確実に発展していける」
自民党鹿児島県連の森山裕会長だ。
保守王国・鹿児島で自民党の手厚い支援を受ける塩田氏だが、政治資金パーティーの裏金問題による逆風を懸念する声もある。
今回の戦い方について塩田氏は。
塩田康一氏
「政党や企業・団体の組織的な活動とこれまでの草の根的な支援活動、これを車の両輪の形でしっかりと回しながら、県民ひとりひとりの支援の輪を広げていきたい」
米丸麻希子氏
「私にはお金もない知名度もない。思いだけしかない」
新人で元自民党県議の米丸麻希子氏は最大の課題として「知名度の低さ」を挙げ、出馬表明して以降、休みなしで各地を回り自身の考えを訴えている。
小雨が降った5月1日、米丸氏の姿は鹿児島市にあった。
Q、きょう誕生日なんですよね?
「そうなんです、49歳!40代最後です」
そんな特別な日につじ立ちを行ったのは、米丸氏が計画に反対する県の新たな総合体育館の建設予定地、ドルフィンポート跡地だ。
新人・米丸麻希子氏
「313億円は半年間で68億円も上がった、お金をどうやって使うかを県民の皆さまに考えていただきたい」
この体育館計画を最大の争点としたい米丸氏だが、各地で開く「語る会」の内容にある変化がうかがえる。
新人・米丸麻希子氏
「鹿児島県とはなんぞやというのが伝えることができていない。しっかりブランド戦略を私はやっていきたい」
この日、米丸氏が体育館に問題触れたのは1時間のうち、10分程度。体育館に割く時間を減らし、民間企業の経営者の視点から、県政の課題について話すボリュームを増やしている。
新人・米丸麻希子氏
「色々な場所に講演に行くようになって、色々な声を聞くことができている。そこの地域によって望んでいることが違うということで、そういう話をできればなと思っう」
米丸氏は空いた時間を見つけては、大票田の鹿児島市でつじ立ちを行っているほか、イベントで県民と触れる機会を増やし、組織に頼らない「草の根」の活動を続ける考えだ。
米丸麻希子氏
「できるだけ1日のうちでたくさんの方々の話を聞く機会を設けていきたい。選挙戦まで残り1カ月弱になってきたが精いっぱいやるだけ」
一方、元自民党の米丸氏の語る会には自民党関係者が訪れることもあるという。
垂水市の会でも、撮影こそ断られたものの、自民党の元県議の姿があった。
保守分裂の可能性もはらむ中、自民党県連の森山会長は「自民党で一緒にやってきた県議だから色々な思いはあるが、ここは割り切って対応せざるを得ない」と話す。
そんな保守系2人の争いとみられていた知事選に先週、新たに1人が名乗りを挙げた。
樋之口里花氏
「命や暮らしが大事にされる鹿児島県をつくりたいと思って立候補する」
樋之口里花氏、52歳。2019年から「市民・野党共闘をすすめるALLかごしまの会」の共同代表を務めている。
これまでも県などに要望や陳情活動を行っていて、今回の選挙では塩田氏、米丸さんが容認する川内原発の20年運転延長や西之表市の馬毛島で進むアメリカ軍の訓練移転計画に反対の声を上げる考えだ。
樋之口里花氏
「鹿児島でこういうことが起こっているということが明らかにならず、考えが似ている2人では(原発や馬毛島が)争点にもならない。県民にってよくないこと、危ないだろうということはちゃんと国に物を言うのが知事の責任だと思っているので、鹿児島には今そういう知事が必要でその選択肢を県民に提示したい」
出馬会見から2日後にはさっそく街頭に立ち「今を暮らす私たちのためにもこれからの子供達のためにも原発のない鹿児島を目指していきたい」と支持を呼びかけた。
樋之口氏は無所属で出馬する方針だが、共産党県委員会が支援する考えを示している。
県政の舵取り役を決める知事選の告示まで1カ月。前哨戦は今後ますますヒートアップしそうだ。
県知事選挙は6月20日告示、7月7日投開票される。
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