山形県内では7月25日の記録的な大雨で日本海側の庄内地方や、北部の最上地方を中心に河川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、警察官2人と86歳の女性の合わせて3人が死亡しました。
山形県によりますと、8月23日時点で被害を受けた住宅は1900棟余りに上り、酒田市と遊佐町、戸沢村、鮭川村の4市町村では、180人余りが今も避難所での生活を余儀なくされています。
こうした中、一部の地域では仮設住宅の建設が進められていて、入居は10月上旬の見通しとなっているほか、民間の賃貸住宅を仮設住宅として利用する、いわゆる「みなし仮設」の受け付けも始まっています。
また、田んぼに土砂が流れ込むなどして農業にも大きな被害が出ていて、農林水産業の被害額はおよそ105億円に上り、被害額はさらに増える見込みです。
住まいの確保や農地の復旧には時間がかかる見通しで、生活再建に向けた継続的な支援が求められています。
大きな被害 酒田市大沢地区は
7月の記録的な大雨で特に大きな被害が出た山形県酒田市の大沢地区は市の北東部に位置していて、荒瀬川沿いに集落が点在しています。
記録的な大雨で地区を流れる荒瀬川が氾濫し、避難途中だった86歳の女性が死亡したほか、山の斜面が崩れて大量の土砂が集落に流れ込むなどして多くの住宅が被害を受けました。
大雨から1か月たった今も土砂や流木に埋もれたままの家もあり、避難所での生活を余儀なくされている人がいるほか、自宅の再建を諦め別の場所に移り住む人も出てきています。
大沢地区で再建を目指す住民
大沢地区の下青沢に両親と3人で暮らす相蘇弥さん(53)は、地区を流れる荒瀬川の氾濫で自宅の1階部分が浸水する被害を受けました。
り災証明書の判定は「大規模半壊」で、大雨から1か月となる今も避難所での生活を余儀なくされています。
コメ農家としてこれまで生計をたててきましたが、およそ7ヘクタールの田んぼにも泥や石が流れ込み、ことしのコメの収穫はできなくなりました。
復旧には時間がかかる見通しで来年以降の収入も見込めないため、自宅を再建するためにどれくらい費用がかかり、支援が受けられるのか、不安を抱えています。
それでもこの地区に住み続けたいと毎日のように避難所から自宅に通い、水につかった家具の片づけや部屋の中にたまった土砂を取り除く作業を続けています。
相蘇さんは「自宅の再建を目指して片づけを続けていますが、今後、どうなるのかはわかりません。保険金だけでは直せないと思うので、行政には資金のサポートなどをお願いできたらと思います。小さいころから住んでいる場所なので、離れなくてもいいようにしたいです」と話していました。
再建を諦め引っ越す決断をした住民も
大沢地区の北青沢で60年ほど暮らしてきた相蘇※リュウ治さん(72)は、近くの山にある川から大量の土砂が自宅に流れ込む被害を受けました。
1階部分はほとんどが土砂で埋まり手がつけられない状態だったため、避難所での生活を余儀なくされていました。
大雨から2週間たったころ自宅の再建を諦め、およそ20キロ離れた酒田市中心部に引っ越す決断をして、ふとんや祖母の写真など最低限の荷物を自宅から運び出しました。
山形県によりますと、この集落には3ヘクタールほどの広さに1万5000立方メートルの土砂が流れ込んだと推定されるということで、自宅が大きな被害を受けた住民の中には転居する人が相次いでいます。
集落に流れ込んだ土砂の撤去作業が重機を使って少しずつ進められていますが、相蘇さんの自宅の中は土砂が流れ込んだ当時のままとなっています。
相蘇さんは「ここにはもう住めません。転居した人も多くこの集落の人数も3分の1ぐらいになります。これからどうやって暮らして生計をたてていくのか、行政の支援も受けながら、住民それぞれ、新しい生活をやっていくしかありません」と話していました。
※リュウは「隆」の「生」の上に「一」
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