環境省と気象庁は4月24日(水)から、従来の「熱中症警戒アラート」を上回る極めて危険な暑さが予想されたときに発表する「熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報)」の運用を新たに始めました。気象庁が23日(火)に発表した5~7月の「3か月予報」では、全国的に平年より気温が高くなる見通しで、早めの熱中症対策が必要になりそうです。情報を活用して、暑さから身を守る行動が大切な夏になるでしょう。また、降水量は西日本の太平洋側と沖縄・奄美では平年並みか多い見込みで、梅雨時期の大雨にも十分な注意が必要です。
高温傾向で季節は前倒しで進む? 梅雨の大雨にも警戒
それぞれの月について詳しくみると、平均気温は5月・6月・7月いずれも、西日本、東日本と沖縄・奄美では平年よりも高くなり、北日本では平年並みか高くなる見通しです。既に4月も全国的に平年より気温がかなり高くなっていて、桜が咲いたと思えば初夏の陽気という所も多くなりましたが、この先も季節が前倒しで進んでいくような状況になりそうです。世界的に高温をもたらす「エルニーニョ現象」は終息に向かっているものの、地球の大気全体の温度が高い状態は依然として続いています。さらに日本付近には、この先も南から暖かい空気が流れ込みやすい状態となる見通しのため、高温傾向の予想になっています。
その暖かい空気とともに湿った空気も流れ込んでくる影響で、6月と7月は、西日本の太平洋側の地域と沖縄・奄美で降水量が平年並みか多くなる見通しです。太平洋高気圧が平年より西への張り出しを強め、その縁を回って雨雲のもとになる湿った空気が流れ込みやすくなるためです。梅雨にあたる6月から7月は近年、大雨の災害が頻発しています。今年もたびたび梅雨前線の活動が活発になり、災害に繋がるような大雨になるおそれがあります。7月の梅雨末期のみならず、梅雨入りして早々の6月も十分な注意が必要で、早めに雨への備えをしておきましょう。また、北日本、東日本と、西日本の日本海側では降水量は平年並みの見込みです。
「熱中症特別警戒アラート」の発表は極めてまれか? 過去に例のない危険な暑さ
今年も暑い夏が予想される中、環境省と気象庁は24日(水)、「熱中症特別警戒アラート」の運用を新たに始めました。この情報が発表されるときは広い地域で過去に例のない危険な暑さが予想され、人の健康に重大な被害が生じるおそれもあるため、ふだんの熱中症対策では足りないことが懸念されていて、一層の対策が必要になります。
これまでも、環境省と気象庁は共同で「熱中症警戒アラート」を発表してきました。これは気温だけではなく、湿度や輻射熱(照り返しの熱)の効果も加味した「暑さ指数(WBGT)」の値が、33以上になると予想されたときに発表される情報です。この熱中症警戒アラートよりも、さらに深刻な健康被害が起きうる危険な状況となることを強調する情報が熱中症特別警戒アラートで、こちらは暑さ指数が35以上になると予想されたときに都道府県単位で発表されます。ただし、熱中症警戒アラートが都道府県内のいずれかの地点で暑さ指数が基準に達すると予想された場合に出されるのに対して、熱中症特別警戒アラートは原則として、その都道府県内全ての地点で暑さ指数が35以上になると予想される場合に発表されます。しかし、過去にその基準を満たす事態になった例はなく、最も近かった2020年8月11日の埼玉県の例でも、全8地点のうち35を記録したのは越谷、久喜の2地点のみでした。こうしたことから熱中症特別警戒アラートの発表は今のところ、かなり限定的になりそうです。
とはいえ、もし、この熱中症特別警戒アラートが発表された場合は、“災害級の暑さ”が迫る緊急事態だととらえるべきでしょう。熱中症特別警戒アラートが発表されている間は、自治体が「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」を設けることが義務付けられています。クーリングシェルターとは、暑さをしのげる場として冷房設備を有する等の要件を満たすことから指定された公民館や図書館、ショッピングセンターなどの施設です。
暑さに体を慣らすのは今のうちに 「暑熱順化」を進めよう!
今年の夏も観測史上最も暑かった去年と同じくらいか、それ以上の猛暑が見込まれるため、こうした熱中症警戒アラートなどの情報を活用して、暑さから身を守ることが必要になりそうです。また、情報を得るだけでなく、今のうちから暑さに強い体づくりを進めておくことも大切です。少しずつ汗をかく練習をして暑さに体を慣らしていくことを、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。まだそれほど湿度が高くなく、熱中症のリスクが真夏ほど高くないこの時期に適度な運動を行うことが有効とされるほか、じんわりと汗をかくまでお風呂にゆっくりとつかることも暑熱順化につながります。また、急に暑くなったときに冷房が使えないといけませんので、エアコンの試運転なども進めておきましょう。
(気象予報士・前田智宏)
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