土砂災害に詳しい東京農工大学の石川芳治名誉教授は、民間の測量会社「パスコ」が記録的な大雨のあとの今月24日に人工衛星で観測した石川県能登地方の画像を元日の地震直後の画像と比較し分析しました。
その結果、氾濫が発生した輪島市を流れる塚田川では地震で崩れた上流部の大量の土砂が流れ下り被害を拡大させたとみられることが分かりました。
石川名誉教授は、今月24日に行った塚田川の現地調査で中流部に大量の土砂が堆積しているのを確認していて、土砂や流木で川が浅くなり氾濫する「土砂・洪水氾濫」が起きたと指摘しています。
「土砂・洪水氾濫」は衛星画像から他の地域でも確認されたということで、石川名誉教授は増水のおそれがない晴れた日に川をチェックして土砂や流木が堆積していたら、雨が降った時には早めの避難を検討することが重要だとしています。
また、土砂崩れで男性2人が死亡した輪島市の「中屋トンネル」付近ではおよそ1.5キロにわたって道路沿いに複数の土砂崩れの跡が見つかりました。
地震で崩れた斜面が今回の大雨で大規模に崩れたとみられるということです。
石川名誉教授は「地震で崩れた土砂が次の雨で流れ下るおそれがある。斜面自体も緩んでいて、崩壊しやすいところもあるとみられ早めの避難を心がけてほしい」と話していました。
《衛星画像から見る塚田川被害》
今回、人工衛星で撮影した輪島市の塚田川の流域の画像を民間の測量会社「パスコ」が下流から上流に向かって動画にしました。
分析は東京農工大学の石川芳治名誉教授とともに行いました。
河口付近まで茶色く濁る
塚田川は輪島市の市役所や朝市通りがある中心部の東を流れています。
河口から海に大量の土砂と木が流れ出ていることが分かります。
下流部では住宅被害
下流部ではたくさんの泥と流木があり、特に住宅の近くで流木が多く、橋にひっかかっている状況も確認できます。
中流部で「土砂・洪水氾濫」
東京農工大学の石川芳治名誉教授が川の中流部としている付近を1月の地震直後の画像と比較します。
下流部より土砂と流木が多く、本来の川とは別の場所を流れていることも分かります。
石川名誉教授は、この一帯では土砂や流木で川が浅くなり氾濫する「土砂・洪水氾濫」が起きたとみています。
上流部に要因
なぜこれほど、大量の土砂と木が流れ出たのか。
今回、上流部でその要因が確認できました。
支流でも斜面崩壊
複数ある支流の斜面には崖崩れのあとが複数確認でき、石川名誉教授は、支流からも土砂や流木が流れこんだとみています。
大量の土砂流下のあとか
そして塚田川のさらに上流部には土砂で埋め尽くされている状況が確認できます。
幅は30メートル程あり、この一帯で周囲の木を巻き込み、大量の土砂とともに流れ下ったとみられるということです。
上流部で地震の崩落
さらに上流を見てみると、崩落した斜面がありますが、ここは1月の地震で崩れたことが分かっています。
石川名誉教授は、地震で崩れた土砂が谷底にたまっていて、今回の猛烈な雨で一気に流されたとみています。この場所から河口まではおよそ4キロあります。
石川名誉教授は「地震がなければ上流部の土砂はかなり少なくてすんだとみられる。地震による土砂災害が今回の大雨被害を大きくしたことが確認できる」と指摘しています。
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