専門家でつくる検討会は、7日、気象庁で定例の会合を開き、南海トラフの想定震源域やその周辺で観測されたデータを分析しました。

このうち日向灘付近の地殻変動について、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されるきっかけとなったことし8月のマグニチュード7.1の地震のあと、宮崎県南部を中心にゆっくりとした東向きの変動が観測されていますが、このクラスの地震で通常みられる変動の範囲内だということです。

地震活動は徐々に減衰していて、9月16日には、マグニチュード5.3の地震が起きましたが、規模の大きさから、巨大地震を引き起こすとされるプレート境界の状態に特段の変化を示すものではないとしています。

日向灘以外では、9月、プレート境界付近を震源とする「深部低周波地震」と呼ばれるごく小規模な地震が、紀伊半島の西部と中部で観測され、ほぼ同じ時期に周辺の複数の「ひずみ計」でわずかな地殻変動も観測されました。

いずれも、想定震源域のプレート境界が数日から1週間程度かけてゆっくりとずれ動く「短期的スロースリップ」が原因とみられ、過去、繰り返し観測されているということです。

また、衛星からの観測で2019年の春ごろから四国中部で、2022年初頭以降に静岡県西部から愛知県東部にかけてそれぞれ観測されている、これまでとは傾向が異なる地殻変動は、プレート境界の深い場所が年単位でゆっくりとずれ動く「長期的スロースリップ」が原因とみられこれまでも繰り返し観測されているということです。

このほか、静岡県の御前崎と和歌山県の潮岬、高知県の室戸岬で長期的にみられる沈降は海側のプレートの沈み込みに伴うもので、大きな変化はないとしています。

これらを踏まえ、検討会は「プレート境界の状況に特段の変化を示すような地震活動や地殻変動は観測されていない」とする評価結果をまとめました。

検討会の会長で東京大学の平田直 名誉教授は「特段の変化はないが、いつ地震が起きてもおかしくない状況に変わりはなく、引き続き地震への備えを進めてほしい」と話していました。

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