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<「80対20の法則」はビジネスにだけ役立つ法則ではない。時間を有効に使い、人生を豊かにするにはどう活用すればいいか。時間に革命を起こす7つのステップとは>

「利益の80%は、顧客の20%がもたらす」「仕事の成果の80%は、費やした時間の20%から生まれる」――これが世の常であるとする「80対20の法則」について、ご存じの人も多いだろう。

それもそのはず、起業家、投資家、経営コンサルタントであるリチャード・コッチによる『人生を変える80対20の法則』の初版が刊行されてから20年以上が経ち、この間36の言語に翻訳され、世界で数百万人に読まれてきた。

日本でも、改訂版となる『新版 人生を変える80対20の法則』や、まんが版『まんがでわかる 人生を変える80対20の法則』のほか、20周年を記念した『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』(リチャード・コッチ著、仁平和夫・高遠裕子翻訳、CCCメディアハウス)が刊行されるなど、時代に合わせて形を変えながら長く親しまれてきた。

この80対20の法則の基本原理を100年以上も前に発見したヴィルフレード・パレートの名にちなみ、「パレートの法則」とも呼ばれ、人生の成功法則として長きにわたり、世界中で語り継がれてきた。

「20%という最小限の努力・労力が、80%の成果・結果をもたらす」というキャッチーなフレーズから、この法則は、いかに最小限のリスクで大きなリターンを得るかという、ビジネスや投資の文脈で引用されることが多い。

しかし実は、ビジネスや投資のみならず、時間管理、人付き合い、幸福など、さまざまなシーンで「使える」人生哲学としても示唆に富んだものなのだ。

最新版である「増補リニューアル版」は全20章から成る。ここでは一部を抜粋し、80対20の法則があらゆるシーンで活用できることを3回にわたって紹介ししていく。

まずは現代人が何よりも重視している、タイムパフォーマンス、タイパにまつわる「時間革命」の話から。

※抜粋第2回:人間関係を変えるには、まず「大切な20人」のリストを作る。すると上位4人に「重要度」の80%が集中する
※抜粋第3回:毎日を幸福に過ごす7つの習慣の1つ目が「運動」である理由

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超忙しい人も、超ヒマな人も、誰にとっても必要なのが、時間革命だ。時間は足りないのではない。時間はあり過ぎるのだ。

問題は、時間の使い方、時間に対する考え方にある。そして、問題があるということは、そこに問題解決の糸口があるということだ。時間革命は、幸福感という意味でも、成果という点でも、大きく飛躍する近道である。

80対20の法則と時間革命

時間の使い方に80対20の法則を適用すると、以下の仮説がでてくる。

・個人の偉業――生活や仕事はもちろん、学術、芸術、文化、スポーツの各分野で成し遂げられた偉業のほとんどは、ごく一部の時間で達成されたものだ。成し遂げられた成果と、それに要した時間との間には、大きな不均衡がある。

・同様に、個人の幸福感のほとんどは、きわめて限られた時間のなかで得られる。幸福というものが正確に測定できるなら、一日でみても、一カ月でみても、一年でみても、一生涯でみても、ごく短い時間に集中していることがわかるだろう。

これを80対20の法則を使って、数量的に言い換えるとこうなる。

・成果の80%は、使う時間の20%で達成される。逆にいえば、使う時間の80% は、成果の20%にしかつながらない。

・幸福の80%は、人生の20%で経験する。人生の80%は、幸福の20%しかもたらさない。

これはもちろん仮説であり、自分の経験に照らして検証してみる必要がある。

この仮説が正しいとすれば(わたしはすでに検証済みであり、大多数のケースで、正しいことがわかっている)、さらに驚くべき4つの仮説が導き出される。

・やっていることのほとんどは、価値が低い。

・時間のごく一部が、残りの時間よりはるかに価値をもっている。

・だとすれば、発想を大胆に変える必要がある。時間の使い方を少しばかり変えたところで何の意味もない。

・時間のわずか20%を有効に使うだけで、時間が足りないということはなくなる。

少しだけ時間を取って、自分の毎日の生活を振り返り、80対20の法則どおりになっているか考えてみよう。正確なパーセンテージはどうでもいい。正確なパーセンテージを計算することなど、そもそも不可能なのだから。

重要なのは、成し遂げた仕事や手に入れた幸福が、それにかけた時間と見合っているのか、それとも大きな不均衡があるかどうかである。生産的な20%の時間が、成果の80%につながっているだろうか。幸福の80%は、時間の20%に集中しているだろうか。

大事なのは、時間をうまく管理することではない

時間と成果の釣り合いが取れていないなら、時間革命を起こす必要がある。時間をやり繰りしようとあれこれ考えても仕方がない。時間の配分を少しばかり変えたところで、大した意味はない。

時間の使い方を根本から見直す必要がある。そして、時間についての考え方そのものを変える必要があるだろう。

時間革命の手引――7つのステップ

時間革命を起こすには、次の7つのステップが必要になる。(以下、ステップ⑦以外のステップについては詳細を省く)

①頭を切り替え、努力と報酬は別物だと考える
②罪悪感を捨てる
③押しつけられた仕事から自分を解放する
④常識にとらわれず、柔軟に時間の使い方を考える
⑤80%を与えてくれる20%が何かをみつける
⑥80%を与えてくれる20%に使う時間を増やす
⑦つまらないことはやめる

活動の80%は成果の20%しか生み出さないので、そうした活動はやめるのがいちばんいい。大事な活動に多くの時間を割くようにすれば、自然とつまらない活動の時間は減ってくると思っている人が多いが、順序が逆で、まず、つまらない活動をやめたほうがうまくいく。

わたしがこう言うと、必ずこう反発される。いくらつまらないからといって、そう簡単に削れるものではない。家族や会社や社会に対して果たさなくはならない義務もあるのだから......。

もし、あなたもそう考えるのであれば、考え直したほうがいい。いまの環境でも、ものごとのやり方を変える余地はあるものだ。先のアドバイスを思い出してほしい。時間の使い方について、常識にとらわれず突飛な発想をしよう。群れのあとについて行ってはいけない。

新しいやり方を試して、どうなるかみてみよう。できればやめたいと思っていることは、そもそも価値がないものなのだから、それをやめたとしても、誰も気づかないかもしれない。仮に気がついたとしても、わざわざ労力を使ってまでまたやらせるほどのことでもないと思えば、黙って見逃してくれるだろう。

ただ、価値の低い活動をやめるために、環境を根本的に変えなければならない場合もあるだろう。仕事を変えたり、会社を辞めたり、いままで付き合っていた友達との縁を切ったり、ライフスタイルを変えたり、といったことが必要になる。

その場合には、何をどう変えればいいのか、じっくり考えてみることだ。何も変えたくないのであれば、新たに達成感や幸福感が得られることはない。


『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』
 リチャード・コッチ 著
 仁平和夫・高遠裕子 翻訳
 CCCメディアハウス

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※抜粋第2回:人間関係を変えるには、まず「大切な20人」のリストを作る。すると上位4人に「重要度」の80%が集中する
※抜粋第3回:毎日を幸福に過ごす7つの習慣の1つ目が「運動」である理由