Dilok Klaisataporn-shutterstock

<株で儲けられる人は何が違う? 重要なのは多様性と創造性。必要な知識の70%は従来の学習とは異なる思考方法によってもたらされる>

思考の多様性

皆さんは、株式投資に必要な情報をどのように入手していますか?

毎日毎日、同じ新聞を読み、同じウェブサイトを訪れ、同じ人たちのユーチューブを見て、同じ人たちのツイッター(X)をフォローし、同じ種類のレポートをチェックしてないでしょうか?

あるいは、時には新しい投資アイディアや投資手法に思いをめぐらせ、自分とは全く違う立場や考えの人の意見を理解しようと、意識的に深く考えることをしているでしょうか?

投資に限らず、先駆的なアイディアを生み出す人物は、考えに多様性を取り入れることによって利益を得ているものです。

多様性のメリット

多様性がどのようにしてより良い答えに結び付くか、を考えてみたいと思います。

何人かに集まってもらって、別々に問題解決を試みてもらうと、一般的に、彼らの回答はバラバラになります。しかし、それらを集めてみると、多様な経験、多様な選好、多様なアイディアなどが反映されるものです。

彼らを一つの集合体として捉えてみると、標準的な人間に多くの情報が集積された状態と見なすことができます。こうした情報の多様性のおかげで、集団による解決方法は、平均的な個人が考えつく解決方法に比べてはるかに信頼の高いものになりえます。

(参考記事)2024年の株価はどうなる? 干支の相場格言「辰巳天井」どおり龍は昇っていくか?

多様性を身に付ける方法

多様性を身に付けるにはどのようにしたらいいのでしょうか。

多様性というものは「知性」と言い換えてもいいのではないでしょうか。知性とは、「何か新しい傾向や法則を発見することにつながる推測をすること」と解釈できると思います。これは、問題を解くこと、議論のロジックを把握すること、適切な類似点を見つけ出すことも含みます。

成熟した社会の中では、専門家の意見は大いに重宝がられます。過去の経験則や法則の中から適切な解決方法を提示してくれるからです。しかしながら、社会が複雑になってくると、個人の集合体の方が、個人(たとえその道のプロであっても)よりも上手に問題を解決する場合が多くなります。

では、投資における知性を身に付けるにはどうすればいいでしょうか。

株式市場のような複雑な世界の中で成功するためには、2つの素養が求められると思います。まず第一に、頭の中でシミュレーションを行い、様々な戦略を思いめぐらせ、最適な戦略を選択できるように心がけること。第二に、こうした思考方法と様々なソースからの情報を融合させるようにすること。

多様な考えを追求できるようになるには、日頃の訓練が必要です。創造的思考のプロセスにおいては、それによって頭の中で様々な考えが浮かびますが、最終的には、目の前の目標を達成する上で有益な考えだけが選択されるのです。

多様性は、弱いシグナルを見つけ出すことを可能にします。弱いシグナルとは、主流となっているアイディアとは全く異なる新しいアイディアの兆し(新しい技術や新しい変化など)かもしれませんし、あるいは、予期せぬソースから正しいタイミングでもたらされた正しい情報の一部かもしれません。

一説によると、ある組織の中で必要とされる知識の70%は、従来の学習という概念とは異なる思考方法によってもたらされると言われています。

次の有益な考えがどこから来るかを知ることは大変難しいですが、とは言え、多様な情報ソースに接することによって、有益な考えを見つける可能性が高まるのは確かのようです。

(参考記事)「損切りは早く、利食いは遅く」 10倍株に出会えない投資家が見逃していること

投資家にも「創造性」が必要

優れた投資パフォーマンスを実現するためには「創造性」が求められるのではないでしょうか。

では、創造性を高めるためには、どのようなことが必要になるのでしょうか。

たとえば、知的好奇心を持つこと、柔軟性を持った考え方で新しい情報を受け入れられること、問題を認識しそれらを明確かつ正確に定義できること、情報を様々な方法で組み合わせ解決方法を導き出せること、権威主義にならないこと、現状に満足せず強い意志でモチベーションを維持し続けること、知性的であるように努めること、目標を第一に考えようとすること。

多様性は、実社会や我々の頭の中で起きている多くのプロセスのエネルギー(燃料)です。

あまりに狭い情報ソースに基づいた取引方法に頼ると、多様性の力を利用するチャンスを逃してしまいます。もちろん多様性のマイナス面もあり、やみくもにアイディアの多様性を追求すると、役に立たないような大量の情報を頭の中で処理しなければなりません。

しかしながら、「バランスの取れた多様性」は、思慮深い投資家のパファーマンスを高め、生活の向上をもたらすことができるのです。

私の実体験から言えることは、たくさんの本を読んで考えれば、色々なことがわかる、ようになるということです。たくさんのことを学ぶと、色々な解決策が見えて来ます。結局のところ、多様な情報と多様な見通しが、投資パフォーマンスを向上させることに役立つのです。

[執筆者]
朋川雅紀(ともかわ・まさき)
大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。

※当記事は「かぶまど」の提供記事です