北九州市出身の棋士、森下卓九段(57)が27日、同市小倉北区のリーガロイヤルホテル小倉で開かれた第62回「毎日・北九州フォーラム」(北九州地域懇話会、毎日新聞社主催)で講演した。約250人の聴衆を前に「この瞬間、瞬間の自分を大事にする。基礎的なことをしっかりして、自分を大切にすることで運が開いていく。いたって平凡だが、棋士生活46年になり、それが大事なことと思っている」と語った。
演題は「運を開く思考と行動 まずは自分を大事にする」。森下さんは「自分はすごく運がいい。また、これからも努力をしないといけないと思う」と述べ、講演を進めた。
市立曽根小4年の時に将棋を始めたという森下さんは、運の良さの一つに地元将棋クラブの席主との出会いを挙げ、「先生に基礎の基礎から教えてもらえたことがプロになる道につながった」と感謝を述べた。その後、故花村元司九段の弟子としてプロを目指す「奨励会」に入会。「三段まではお茶をつぐ係、四段からはお茶を飲む立場だった」と当時を振り返り、プロと認められる四段になるために、発想を変えて午前3時に起き勉強を始めたことや、台頭するライバルに対抗するため「誰よりも勉強するしかない」と頑張った事も紹介した。
聴衆には「(頑張っている)子供や孫以上に熱くなってはいけない。運も逃げてしまう」と助言した。
5歳で将棋を始め大規模な大会で準優勝歴もある小学4年、森下斗真さん(9)=小倉北区=は母の絵理香さん(36)と来場。「自分や周囲を大事に、プロを目指したい」と興味深そうだった。
夫婦で参加した小倉北区緑ケ丘の佐藤英基さん(81)は「森下さんの師匠の故花村九段のファンだったので、とてもおもしろかった。プロ集団の厳しい話が聞けて良かった」と満足そう。
2012年ロンドンパラリンピックのゴールボール金メダリスト、浦田理恵さん(46)も「四段に昇格するために『これまでと同じことをやっていては先に進めない』と、自らを奮い立たせた強さに感銘を受けた。棋士もやはりアスリートだ」と語った。【反田昌平、宮本勝行、平野美紀】
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