テレビ東京などが昨年3月28日に放送した「激録・警察密着24時!!」で、過剰な演出や不適切な内容があった問題で、「摘発の日」とされた映像が実際には前日の撮影だったことが分かった。識者からは「テレ東は十分な検証をしていない」との声が上がる。

 番組では愛知県警が2021年7月、会社役員ら4人を不正競争防止法違反の疑いで逮捕した事案を取り上げた。

 編集について、テレ東は「刺激的」なナレーションといった複数の問題で謝罪していた。今回、「摘発の日」のテロップに続く警察署長の訓示の場面について、映り込んだ時計の時刻などから朝日新聞が指摘すると、テレ東広報・IR部は「テロップは誤りだった」と前日の撮影だったことを書面で認めた。

 番組では、逮捕された4人のうち3人は放送の1年半前の21年9月の時点で不起訴になっていたが、言及しなかった。また、顔や建物にモザイクを施していたが、事件は広く報道されており、本人が特定できる状況にあった。テレ東は「配慮が不足していた」などと取材にコメントした。

 警察署内での捜査員らによる会議などのシーンは、逮捕後に撮影したものだったが、明示しなかった。テレ東は「事実に基づく再現」とし、「再現と入れ忘れたことが問題だった」と会見で説明した。俳優らで行うのが一般的な「再現」を、テレ東では警察官自らがしていた。

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は19日、審理に入ると公表。制作過程について、改めて確認するとテレ東の担当者は「BPOが審理入りしているためコメントは控える」と述べた。愛知県警は取材に、「放映については報道機関の責任において行っているものであることからコメントする立場にない」と書面で答えた。(堀越理菜、西田理人)

立教大・砂川浩慶教授(メディア論)の話 

 被疑者の人権より、自らをPRしたい警察と一体化し、放送局の主体性を失ってしまったがゆえに今回、不起訴などの確認を怠ったり、警察に捜査の様子を再現させたりしたのではないか。しかも、新たな問題が判明するなど、十分な検証や説明責任を果たしていない。テレビ東京が自ら、第三者委員会を立ち上げて、検証し、公表することが求められるような事態だ。にもかからず、放送界の自浄作用を促すためにあるBPOを盾に、メディアの質問に答えないのは、本末転倒だ。人権を侵害されたという当事者の苦情を受けてBPOの放送人権委員会で検証することと、テレ東自身が番組の制作過程が正しかったかどうかを第三者委で検討することの意味は違う。放送などの既存メディアが強みにしてきたのは、自己検証のはず。約20年にわたって放送されてきた番組について、表層的ではなく、根本的に、見直す機会にするべきだ。

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