マタギの伝統を受け継ぐ山間の町を舞台に、2人の若者が禁じられた熊撃ちに挑む映画「プロミスト・ランド」が29日から全国公開される。山形市出身の作家・飯嶋和一さんの同名小説が原作で、山形県内で全編撮影された“メイドイン山形”の作品だ。先行上映された山形で、出演者らが作品や山形の魅力を語った。

 主人公は、閉鎖的な暮らしに不満を抱える二十歳の信行と、信念を貫く兄貴分の礼二郎というマタギの若者2人。自然と共に生きるマタギの文化を通して、消えつつある伝統文化の継承や自然への畏怖(いふ)を描いている。

 撮影は2023年4月中旬から約2週間、鶴岡市や西川町などで行われた。

 飯島将史監督らは約3年前からロケハンなどで山形を訪問。庄内地方のマタギに密着したドキュメンタリー「MATAGI―マタギ―」(23年公開)を先に撮影し、マタギたちと信頼関係を築いた。そして、満を持して製作したのが本作だ。

 舞台あいさつに立った飯島監督は、映画化のきっかけについて「時代が変わる中で自分も変わらないといけない、逆に変わりたくないという感情をうまく発露できない登場人物の2人の姿がいいなと思った」と語った。

 1年を通して山形を訪れた経験から、山形の魅力について「山菜を食べて生活するなど、山の近くに住む人たちは自然と一緒に生きているような感じがする。すばらしいと思った」

 山間部の撮影ならではの苦労や喜びもあったという。信行役の杉田雷麟さんは「山菜が芽を出したり、カモシカが近くまで来たりといった大自然が印象に残っている」。礼二郎役の寛一郎さんは「10分の9ぐらいは山での撮影。だんだんと山になじんでくる、不思議な感覚だった」と振り返った。

 マタギは年々減少し、後継者不足にあえぐ。寛一郎さんは「マタギも映画も文化のひとつ」とした上で、「文化を次の世代に受け継ぐのは大切なこと。踏襲するものと、してはいけないものを考える必要はあるけれど、この映画はそうした文化を継ぐ大切さを包括した映画だと思う」と締めくくった。(安斎耕一)

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