収蔵品の整理と空調の故障を理由に7月中旬から休止している奈良県大和郡山市の県立民俗博物館について、山下真知事は30日、約4万5千点の収蔵品をデジタル空間で長期保管していく方針を示した。

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 同館は1974年の開館当時の収蔵品は7566点だったが、生活様式の変化で民具が消滅していくという危機感から積極的に資料を集めるようになり、プレハブ倉庫や閉校した高校なども活用して分割して保管してきた。

 2014年以降は新規の受け入れを抑制したが、約4万5千点の収蔵品数は、多くの近畿圏の博物館・資料館が5千~1万点であることと比べて、群を抜いて多い。

 今回、3年後の再開をめざす休止期間中に資料を整理することになっている。山下知事は10日に「文化財に指定されていないものを保管する必要もスペースもない」として一部の収蔵品の廃棄を検討する考えを示し、翌週に日本民具学会から「安易な一括廃棄を懸念する」との声明が発表されていた。

 山下知事は30日の定例会見で、新たな収蔵場所の開設には9億円程度かかるとみられ、現実的ではないとの考えを示した。その上で、全ての資料を3Dスキャンしてデジタルアーカイブ化し、有識者の検討委員会で保存や除籍のルールをつくる方針を発表した。

 市町村や民間への譲渡も進めて、引き取り手のないものを廃棄するとの方針も示し、「安易な廃棄にはあたらない」と述べた。全国の6割超の郷土系博物館は「資料が満杯状態」とする日本博物館協会の調査結果をもとに、「全国が先送りしてきた課題に先駆けて果敢に取り組む」と語った。

 ただ、全資料のデジタルアーカイブ化には「途方もない時間と労力が必要」とし、大学やボランティアの協力を得て進めるとし、国に補助金の制度の拡充などを要望していく考えも示した。(机美鈴)

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