下町の元銭湯が月に一度、小さな映画館に変わる。そんな催しが7月で一周年を迎えた。無声映画を語りで楽しませる「活弁」のイベント「カツベンのゆ」。主催者は地域に根ざした取り組みにしたいと意気込む。

 7月下旬の土曜日、45人ほどが東京都台東区の元銭湯「快哉(かいさい)湯」に集まった。カフェと会社事務所に改修されたかつての洗い場に座り込み、喜劇王チャーリー・チャップリンの作品など3本のコメディー映画を鑑賞した。活動弁士の澤登(さわと)翠(みどり)さんの語りで、会場は笑いに包まれた。

 イベントは昨年7月に始まり、11月からは毎月1回開かれている。地元在住で映像制作を手がける会社を営む大山孝岩(たかいわ)さん(36)が地域を盛り上げようと始めた。これまで計5人の弁士が様々なジャンルの映画に語りを添え、三味線の演奏とともに語りを披露したこともあった。毎回30人以上が集まり、常連客もいるという。

 東京都大田区から夫婦で訪れた横田梧朗(ごろう)さん(28)は「会場の笑い声も作品のように感じ、ライブ感があった。話し手によって作品の印象が変わると思うのでもっと見てみたい」。アメリカから来た男性(76)は「様々な登場人物の声を使い分けているところが見事で、とても楽しめた。日本語はわからないが、声の芸術を十分に理解できた」と語った。

 大山さんは「活弁はライブ感が魅力。初めて見たときは命が吹き込まれたようだった」と語る。今後は企業からの協賛も模索しながら、地域の支えで毎月の開催を目指したいという。次回は8月31日を予定している。詳細は大山さん(katsuben.yu@gmail.com)。(友永翔大)

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