特集は、マエストロの志を継ぐコンサートです。8月11日、長野県松本市で、高校生以下無料のコンサートが開かれました。企画したのは小澤征爾さんとの出会いをきっかけに音楽の道に進んだ女性声楽家。「小澤さんのように芸術に触れる機会を提供したい」と開催しました。
■コンサートで歌う声楽家 上島さん
8月11日の「山の日」に合わせて開かれたコンサート。
オペラの本場・イタリアで研さんを積んだ声楽家たちが「山」にちなんだ曲などを歌い上げました。
♪「カルメン」から
ハバネラ
ホールいっぱいにメゾソプラノの美しい歌声を響かせたのは地元・松本出身の上島緑さん(36)です。
■小澤さんが指揮するオペラに参加
上島さんが音楽の道を志したきっかけは、小澤征爾さんとの出会いです。
小学6年生の時にオーディションを受けてサイトウ・キネン・フェスティバル松本(現OMF)の児童合唱団に選ばれ、小澤さんが指揮したオペラ「ファウストのごう罰」に参加しました。
声楽家・上島緑さん:
「私はその時代、ミニ四駆とかマウンテンバイクとかちょっと男の子っぽいようなことをしていたから、もう本当に衝撃ですよね、オペラに出会うっていうのは」
■オペラ参加きっかけに声楽家に
小さい頃からピアノを習っていましたが、この体験がきっかけとなって高校生の時に声楽家になろうと決意。東京芸術大学・声楽科に進学しました。
大学院修了後、イタリアに渡って研さんを積んできましたが、今でも小澤さんのオペラに参加したときのインパクトを超える体験はないと話します。
声楽家・上島緑さん:
「あの時の小澤さんがとても力を込めてなさったオペラは、世界の中でのオペラのクオリティーからしても、とても質の高いものだった。それを小学校6年生の時に体験できたわけですから、すごいことを経験させてくれたんだなと感じます」
■2024年2月小澤さん死去
あれから25年。
2024年2月、小澤さんが亡くなりました。
■志継いで子供が芸術に触れる機会を
子どもたちに本物の音楽に触れてもらおうと精力的に活動してきた小澤さん。
訃報を受けて、上島さんは自分もそうした機会を提供したいと今回のコンサートを企画しました。
声楽家・上島緑さん:
「(小澤さんが)子どもに対して芸術作品に触れさせる機会は、本当に松本で多くとってくれていたことに気づいた。本当に微々たることですけれども、高校生以下を無料にさせてもらって、いろんな機会を経験してもらいたい」
■初めてコンサートを企画から開催
声楽家・上島緑さん:
「これはね、録音してます。今までやったことない、でも楽しい」
自身が中心となってコンサートを開催するのは今回が初めて。
出演者:
「In bocca al lupo!(幸運を祈る)」
「Crepi!(ありがとう)」
チケットの「もぎり」などは、家族や親せきに手伝ってもらいました。
■影アナは母親が担当
(場内アナウンス)
「ただ今より10分間の休憩といたします」
「影アナ」は上島さんの母親が担当―。
上島さんの母・喜栄子さん:
「一緒にドキドキしてます。孫たちも来て手伝って」
■俳優・市毛さんとのプログラムも
司会は上島さんと交流のある俳優の市毛良枝さんが務めました。上島さんが翻訳したドヴォルザークの詩を市毛さんが朗読、上島さんが歌うというプログラムも。
市毛良枝さん:
「歌にも踊りにも愛にも別れを告げるのよ、全てに」
♪「ジプシーの歌」
市毛良枝さん:
「私はクラシックが大好きで、小さい頃から触れていたからかなとは思うんですけど、小さいときからそういう環境にあることってその後の生活を豊かにしてくれると思う。若い人が何かっていうときにお手伝いできたら、すごくすてき」
■子どもたちもオペラの世界へ
♪「オー・ソレ・ミオ」
訪れた子どもたちは、オペラの世界に触れることができました。
鑑賞した子ども:
「いつも歌ってる歌とは、ちょっと違うところがあって面白かった」
「感動しました。響きとか、声の強さとか、なんかすごいなって思いました」
親:
「家族ですとか、若い子も両親と一緒に楽しんでほしいっていうその趣旨がすごく伝わって、本当にありがたく思います」
■小澤さんがまいた種、実を結ぶ
これからもふるさとの子どもたちに音楽を届ける活動をしていきたいと話す上島さん。
小澤さんがまいた音楽の種は着実に芽生え、実を結んでいます。
声楽家・上島緑さん:
「(小澤さんが)音楽にどれだけ集中して真心をかけてできたかというものを本当に真剣に取り組んでくださったので、それは伝わるんですよね。だから私も、自分もそういうことができたらなと」
♪「サウンド・オブ・ミュージック」から
すべての山に登れ
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