小規模出版社の本や流通に乗りにくい埋もれた良書、普通の本屋では扱われない自費出版物など、独自の視点で集めた本を取り扱う栃木県小山市のユニークな書店「スローテンポ書店」が、オープンして約5年。JR小山駅西口の複合商業施設「ロブレ」の地下1階で、誰もが気軽に参加し意見を言える空間づくりを目指し懇話会を開催したり、4月からは店内の一角に利用者が本などを販売できるよう「貸本棚」を設置したりしている。さらに人と人の交流の場を広げようと、利用者を募っている。【松沢真美】
同書店は、効率優先の競争社会から人と社会の本来のテンポを取り戻すことを理念に活動する「スローテンポ協会」が運営する。同協会代表理事でもある名取春彦店長は、誰もが安心できる居場所づくりをと、2017年から下野市で約2年半運営したのち、現在地に移転した。
扱う本は、高齢者・障害者の問題、心の病、差別と偏見、居場所づくり、地域づくりなど多彩なジャンル。生き方を変えるような本、元気をなくした人たちが生き生きと輝くようになる本などもあり、現在は約2000冊をそろえる。
懇話会は、身近な悩みや困りごとの問題解決に向けて話し合う会のほか、本を読まない人の読書会、海外出身者と日本人が仲良く話し合う会(FJF)などを定期的に開いている。また、名取店長は「声の小さな人でも、誰もが自分の考えを発信できる場を作りたい」と、考えを正確に伝えるための文章教室も実施している。
貸本棚も交流の場を広げる取り組みとしてスタート。利用料月額500円で棚を貸し出し、本の販売や展示など自由に使用してもらう。「つながる本だな」と名付け、それぞれの個性ある本棚で、客と意見を共有したり、情報交換したりするなどさまざまな活用が期待されている。
名取店長は「本は情報を得るだけでなく、本を通して人同士がつながり、価値観や人生を変える可能性を持っている。本の価値を伝え、まちづくりにも発展させていきたい」と意欲的だ。
営業は火、木、土曜の午後1~7時。祝日は休み。問い合わせは同店(0285・32・7211)。
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