20代の女性社員が増えたせいか、映画の感想を語り合っていても、話題がいつしか恋バナに展開し、キャッキャと職場が明るい。

 どういうワケか映画には、結婚相手にはそぐわない男性がよく出てくる。仕事をしていなかったり、繊細で落ち込みがちだったり、性に奔放過ぎたり、裏社会で暗躍していたり。ほれちゃダメな危険な男たちとの、めくるめく恋を妄想し、母性を刺激され、トークは弾み、膨らむ。

 この映画の主人公も格好の恋バナの餌食。行方をくらました恋人の幻影にとらわれ、人生を犠牲にして恋人を探すボロボロの男。一途さを是とするのか。墓を荒らしてまで恋人を探す盲目さに興ざめするのか。ミステリアスさに溺れるのか。現世と来世を行き来する孤独な男は、女子たちの現実と妄想をも行き来する。そして恋バナは尽きない。

    (桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で上映中

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