将棋の第75回奨励会三段リーグの最終17、18回戦が7日、東京都渋谷区の将棋会館であり、獺ケ口(おそがぐち)笑保人(えほと)三段(24)と吉池隆真(りゅうま)三段(19)の四段昇段が決まった。獺ケ口三段が15勝3敗で1位、吉池三段が14勝4敗で2位となった。10月1日付でプロ入りする。

 2人は昇段を決めた後、そろって記者会見に臨んだ。

 獺ケ口三段は森信雄七段(72)門下。三重県熊野市出身で、現在は群馬県前橋市で暮らしている。

 奨励会には2013年6月に入会し、三段リーグ3期目での昇段となった。獺ケ口三段は「奨励会生活がすごく長かったので、すごくほっとしています。応援してくださった方にいい報告をできてうれしい」と語った。

 群馬大学医学部の4年生で、医師と棋士の両立をめざしている。「少し前までパーキンソン病の研究をし、今は神経科学を研究しています。2年後には医師免許を取得したい」

 群馬大医学部には2浪で入学したが、もともと医師をめざしていたわけではない。「将棋で生きていくつもりでしたが、18~19歳のときに奨励会1級から2級に落ち、現実的に棋士になるのは厳しいと考え、医学部をめざしました」。人と話すことが好きで、人の役に立てる仕事として、医学の道を考えたという。

 三段リーグには3期在籍したが、最初の期は5勝13敗で最下位。「情けなかったですが、ここで勝てる実力をつけたいと思った。そのつらい経験が自分の棋力を伸ばしてくれたのかなという気がしています」

 この日の最終日はトップの成績で迎えたが、そのことをはっきりとは知らなかった。「自分がトップとうわさでは聞いていました」。将棋に専念するため、今期はリーグの成績表を見ないことにしていた。「そういう意味ではいつも通りで最終日を迎えることができました」

 特徴的な氏名だが、名字の「獺ケ口」は福井県の地名に由来し、名前は「笑いを保つ人になってほしい」という意味と、英語のエフォート(努力)を重ねた意味だという。

 得意戦法は「角換わり」。「指し手で注目して頂ける強い棋士になりたい」。あこがれの棋士は米長邦雄永世棋聖だという。

 2位で昇段した吉池三段は、室岡克彦八段(65)門下。東京都荒川区出身で、小学1年生で将棋と出会い、地元で室岡八段が開いた将棋教室に通い始めたのが将棋を始めたきっかけだという。

 奨励会入会は15年9月。三段リーグ5期目での昇段となった。「自分も奨励会がけっこう長かったかなと思っている。いろんな方に報告して喜んで頂けているので、これからもがんばっていきたい」

 奨励会員だが、その実力は知られてきた。若手棋士の登竜門と位置づけられる23年の第13期加古川青流戦では決勝三番勝負に進出し、現役最年少棋士の藤本渚五段(19)に敗れたものの、奨励会員として準優勝の成績を収めた。

 将棋界随一の研究量で知られる永瀬拓矢九段(32)の研究会に参加し、藤本五段とはネット将棋で「VS」と呼ばれる一対一の研究をする間柄だという。

 得意戦法は「右玉」と「雁木」で、力戦型の将棋を得意としている。「そういう将棋ならではの、人に見てもらえるような、引きつける将棋を指していきたい」

 尊敬する棋士は永瀬九段だという。「研究会で誘っていただいて、この1年間ぐらい吸収できるところがたくさんあった。永瀬先生のような粘り強く、最後は勝てるような将棋をめざしたい」

 今期三段リーグでは10戦目を終えたところで8勝2敗と好調だったが、そこから2連敗を喫した。昇段への厳しさを感じたが、連敗後に逆にのびのびと指せるようになったという。

 小学校のころ始めたサッカーが好きで、外国のサッカー観戦が趣味。プレミアリーグのリバプールのファンだという。

 三段リーグは年2回あり、原則として上位2人が四段に昇段する。今期は44人が参加していた。(杉村和将)

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