アートには不自由の中にさえ、自由を見いだす力があると思う。1970年代のスペイン。フランコ政権による独裁政治を背景に、料理というアートの自由さに胸が熱くなる1本。

 反体制の活動をした罪で、追われる身となったシェフのフェルナンドは、バルセロナを離れ、画家サルバドール・ダリの暮らすカダケスへやって来た。

 逃亡中の厄介な身の上でありながら、ブイヤベースの味一つで人々の心をつかみ、隠れ家と職を手にするフェルナンド。彼が働き始めたのは、ダリを敬愛するオーナーが、美食家ダリを招きたくて造ったレストラン。フェルナンドはカダケスの海風に身を委ね、恋をし、フレンチの知識と豊かな感性で新しくて独創的な料理を次々に生み出す。やがて「キッチンのダリ」なんていう、すてきな称号をもらったり。果たしてダリはレストランを訪れるのか。

(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で上映中

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