茨城県笠間市立図書館の個人貸出数が、人口8万人未満の市区で2013年から12年連続トップの座を守っている。読書離れが進む中で快挙を遂げた裏には、笠間焼で知られる焼き物の町ならではの特色ある蔵書や、普段は手にしない本にも出合ってもらうための仕掛けづくりを地道に続けてきたことがある。
日本図書館協会が蔵書数などを人口規模別に掲載する「図書館年鑑2024」によると、22年度の市内3館と電子図書館を合わせた個人貸出数は約98万7000点となり、113市区中、1位。2位は守谷市の約96万8000点だった。
笠間市内には笠間、友部、岩間図書館があり、いずれも貸し出しに当たり、利用者の居住地や冊数に制限を設けていないのが特徴だ。笠間図書館(笠間市石井)によると、子供に読み聞かせる本を借りる人はとりわけ、冊数が限られると足りないことがあり、喜ばれているという。
各館とも蔵書に特色があり、筑波海軍航空隊があった旧友部町の友部図書館では同隊に関する資料、東大の付属牧場があり、栗の栽培も盛んな旧岩間町の岩間図書館では農業に関する資料をそろえている。
笠間図書館では笠間焼など焼き物に関する資料約3400点を取りそろえている。市内だけでなく、焼き物の産地・栃木県益子町の作家も訪れるという。館内には笠間焼のミニギャラリーがあるほか、作家ごとに個展のチラシなどをファイルにまとめ、随時追加している。
さまざまな分野の本を手に取ってもらおうと、テーマごとの特集コーナーの設置や、文学、歴史など十ある分類の中から五つの分類の本を読んで感想を書いてもらう「分類ハーフマラソン」などのイベントにも力を入れている。同館司書の矢作(やさく)幸枝さん(52)は「人によって読書の傾向が決まっているので、普段読む本とは違う本に興味を持ってもらう仕掛けづくりを、地道にこつこつやっている」と話す。
24年度はさらに、乳幼児向けの図書を充実させたという。絵本の読み聞かせや小学生対象のクイズラリーの開催などを通じ、子供の頃からの切れ目ない利用につなげようとしている。
一方、個人貸出数が100万点を超えた新型コロナウイルス禍前の水準には戻っていない。小谷佐智子館長(59)は「地道な取り組みを続け、コロナ禍で図書館に来る習慣のなくなってしまった方には戻ってきてもらい、新たな利用者を獲得していきたい」と話している。【鈴木敬子】
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