TSKとJALのコラボ企画、今回の担当は、客室乗務員でJALふるさと応援隊の中村美々子さんです。中村さんが取材したのは松江市の「絹工房」です。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
島根伝統の幻の染料にこだわり、丁寧な手仕事で着物を織りあげる染織家を取材しました。

今回訪ねたのは、松江市にある絹工房の染織家・矢野まり子さんです。その工房で目を引くのは、大きな機織り機でした。

染織家・矢野まり子さん:
(機織り機は)完全オリジナルです。京都の機屋さんに持って行って作っていただきました。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
模様を考えながらされるのですか?

染織家・矢野まり子さん:
もう決まっています。(決まった模様が)出るように決まっているんですよ。もう全部、織物設計というのは、機織り機にかける前にもうすべて決まっているのです。

機織りの様子を見るのは初めてという中村さん、興味津々です。織りに使われる糸にもひかれました。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
この紫の色が、とても鮮やかできれいですね。

染織家・矢野まり子さん:
この紫は地元で栽培された「紫根(しこん)」という染料を使って染めたものです。

いにしえから高貴な色とされてきた「紫」。日本に伝わる本来の紫を引き出すのが、ムラサキ(紫草)の根「紫根(しこん)」です。漢方としても使われた植物「ムラサキ」の根を乾燥させたもので、古くから染料や薬として使われてきました。しかし、ムラサキは絶滅危惧種に指定され、今では幻の染料となっています。2000年に雲南市加茂町で「出雲根紫(いずもむらさき)」として栽培が復活、矢野さんはその出雲根紫で絹糸を染め、帯や着物に織りあげています。

20代のはじめに織物と出会った矢野さんは、東京や岡山県倉敷市でファッションの世界に身を置いたあと、沖縄の石垣島で染めや織りの技術を身につけました。20年ほど前に松江に工房を開き、創作を続ける矢野さんにとって、この紫には特別な思いがあります。

染織家・矢野まり子さん:
染織家にとっては本当に夢の染料で手に入らないし、一生染めることはないだろうと思っていましたが、地元で栽培されていることがわかって使わせていただいている。

矢野さんは、織りに使う糸にもこだわります。サナギが生きている状態の繭から糸を引く、昔ながら「生繭繰糸(なままゆそうし)」で糸を繰り出します。こうして作り出された絹糸は艶ややかで柔らかく、色の乗りも際立ちます。中村さんは、糸を巻きとる作業を体験しました。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
糸が細くて繊細で、想像以上に難しいですね。

染織家・矢野まり子さん:
そうですか?大丈夫ですよ、切れないですから。絹糸って、けっこう強いんですよね。

こうして繰り出された糸を紫根のほか、季節の草木で染め上げます。

『出雲路の 縁をむすぶ 衣紫(きぬむらさき)』
矢野さんは、仕上げた着物の一点一点に一句したため、想いを乗せています。

染織家・矢野まり子さん:
最初に句ができる場合と、あとにできる場合とありますが、今回のこの着物の句は最初に出来上がりました。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
そうなのですね、このように句も一緒に詠まれると、着物への愛着もわきますね。

臭木(くさぎ)や藍などで染めた着物にはこちらの一句を添えました。
『宍道湖に 浮かぶおもいの 水衣(みずごろも)』
特別に試着させていただくと…。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
すごく肌ざわりがよくて、なめらかですね。軽くて着心地がすごくいいです。矢野さんが織りなすデザインや作品を手に取った方に、みなさんにどのように感じていただきたいですか?

染織家・矢野まり子さん:
時代を超えた色柄でありたいと思っています。この着物を求めてくださった方には100年、お母さん娘さん、お孫さんまで長い時間をかけて着ていただけたらと思っています。

自然豊かな島根で育まれた素材を活かし、伝統の輝きを次の時代につなぎます。

平川翔也アナウンサー:
矢野さんの素材や作品への思い、素敵でしたね。

JALふるさと応援隊・中村美々子さん:
作品に対する深い愛情を感じました。矢野さんが織りあげた作品が、何世代にも渡って受け継がれて欲しいと思いました。

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