映画『おくりびと』(2008年)を自ら企画し、日本映画初の米アカデミー賞外国語映画賞を獲得した俳優・本木雅弘が『日曜日の初耳学』に登場。林修を聞き役に、人生最大の助言者、義母の樹木希林さんの教えなどを打ち明けた。また、43年来の“戦友”として小泉今日子がメッセージをよせ、「びっくりするほど自己評価が低い」と、本木の意外な一面を明かした。
■デビュー当時「15人くらい女の子を引き連れて、電車でTBSへ」
本木の芸能界デビューは『2年B組仙八先生』。翌1982年に、シブがき隊として歌手デビューを果たした。『2年B組仙八先生』撮影当時は、埼玉の実家から東京のスタジオまで電車で通う日々。
「自分の家の門から15人くらいの女の子を引き連れたまま、一緒電車に乗ってTBSに行く、という…」と、当時の“日常”を回想。林が「ファン引き連れての通勤だったんですか?」と驚くと、「そうですね。当時、アイドルは大抵そんな雰囲気だったと思います。でもそれに違和感がありました。なぜ自分たちみたいな輩(やから)にそんなに騒げるのかって」と、自身の状況を冷静に見る感覚があったと打ち明けた。
“蔵出し”された43年前の『2年B組仙八先生』出演シーンを見て、「これ流すんだ…」と苦笑いしなら、「ちょっと見られませんよね。薬丸(裕英:同じく生徒役で出演)さんの迫力のほうがよっぽど…あれ15歳の声か、っていう感じですもんね」と懐かしげに振り返った。
■小泉今日子が証言「びっくりするほど自己評価が低い」
“本木をよく知る友人”として番組にメッセージを寄せたのは、1982年に歌手デビューした“花の82年組”の同期・小泉今日子。忙しい日々を共に駆け抜けた小泉の登場に、本木は「同志ですね」と感慨深げ。小泉も「幼なじみのようなもの。ちょっと遠い親戚感」と、絆を滲ませた。
小泉から見た本木は「びっくりするほど自己評価が低いんですよ。常に後悔しているし、悩んでいるし。人に気を遣いすぎてずっとしゃべっている」。日本が誇る名優の意外な素顔が明かされると、本木自身も「誰かから認められたいと思って生きている。そのことがいつも悩ましいんです。こういう性格、どうしたらいいんでしょう」と、意外なコンプレックスを打ち明けた。
一方で、「エゴサーチ好き」だといい、「きらっと光る指摘を見つけたりすると、わかる人にはわかってしまうんだな、と自分への戒めにもなる」とも。NHK大河ドラマ『徳川慶喜』(1998年)で主演を務めた際には、NHKに寄せられる感想FAXのうち「ネガティブなものだけ見せてくださいと言って…。『こういうところ見られてるんだ、ここがダメなんだ』っていうことを見ながら、それを翻していこうと」と、批判的なものばかりチェックしていたそう。これには林も「ほめ言葉は何の役にも立たないですよね。非難の言葉に改善ポイントが隠れていることも多いです」と共感しきりだった。
■人生最大の助言者は、樹木希林さん
本木は1995年に也哉子さんと結婚し、也哉子さんの母で、俳優の樹木希林さんとも家族になった。樹木さんの言葉で忘れられないというのが、「おごらず、人と比べず、面白がって平気に生きればいい」という言葉だ。
本木は「“面白がる”と“楽しむ”は違う。“面白がる”っていう言い方が樹木さんの場合、肝ですよね。すべてを、良かった方向に持っていく。自分のダメさも引き受けて、認めて、それを面白がっていくということにつながる。(樹木さんは)人生の最大の助言者でしたね」としみじみ。
樹木さんからは、“育てる”という考え方も受け継いだという。「どんな形であっても、“子を育てると自分が育つ”。それは子どもじゃなく、植物やペットでもいいんです。“育てる”、その日常生活がなければ、役者というのも成立しない、という考えの人だった」と語った。
■本木雅弘が考える“年を重ねることのだいご味”
最新作は、倉本聰原作・脚本の映画『海の沈黙』(11月22日[金]公開)。本木が主人公を、小泉がその昔の恋人を演じているが、それぞれ本木と小泉を想定した“あて書き”なのだそう。
小泉が「“かつて付き合っていた時間”を想像したときに、ちゃんと10代、20代の姿で本木さんが思い浮かべられるっていうのは、長い付き合いだからできること」と振り返ると、本木も「私と小泉さんの43年来の歴史がうまく役と交錯して、映り込んでいる」と語る。
唯一無二の“戦友”小泉とも励まし合いながら40年以上走り続けてきた本木。年を重ねることについては、「完璧を目指すのではなく、自分の中のほころび、欠点さえも味わいとして晒し、うまく取り入れていくことができる。それが年をとることのだいご味。今になってそう思いますね」と語り、インタビューを締めくくった。
華やかなキャリアからは想像もつかないほど冷静で、堅実な佇まいが印象的だった本木。インタビューを終えた林は、本木について「誠実な内省の人なんだなと。より多く自分と語る時間がある中で、自分の魅力を作り上げていく。適切な自分の育て方・あり方を見出した、ちょっとほかの人が追いつけないものをたくさん内面に備えている方だなと思いました」と感じ入っていた。
(MBSテレビ「日曜日の初耳学」2024年11月17日放送より 無料見逃し配信はTVer https://tver.jp/episodes/eplfxytzzs)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。