奈良文化財研究所(奈良市)は、国や都道府県が指定する文化財に関する報告や記録を集約し、一覧検索できるデータベース「全国文化財目録」を公開した。対象は同じなのに、組織によって異なる名称が使われていた報告書のデータを統合し、情報の収集や比較がしやすくなった。まずは調査概要の情報のみまとめており、今後も関連情報の統合を進めて、研究や情報管理で飛躍的な効率向上を目指す。
国や自治体が公開している文化財約73万件を精査し、同じ対象なのに呼び方の違いなどで重複していたものを除いた約51万件(無形文化財なども含む)に固有のIDを付与。IDごとに調査記録などの情報を関連付けた。関連画像をAI(人工知能)で見分ける仕組みも開発中で、関連する画像をIDごとに集約させることを目指す。発掘担当者などが調査した文化財の情報を直接入力して、新たに判明した情報を速やかに共有する仕組みも整備する計画だ。
奈文研によると、国内では文化財情報のデジタル化はあまり進んでいない。文化庁監修の「発掘調査のてびき」(2010年)でも、報告書はデジタルデータでなく紙媒体による印刷物とするよう求めている。画像などのデジタルデータを管理する体制も整っておらず、現在も発掘記録をフィルム写真で残す自治体が多いという。
データベースを開発した奈文研の高田祐一主任研究員は「伝統的に紙やPDF形式の報告書が優先された結果、データとしてかなり不便になっていた。紙やPDFの報告書も検索しやすいようテキスト化し、IDと結びつけた情報として生かしていきたい」と話した。
データベースは奈文研ホームページの「全国遺跡報告総覧」から利用できる。【稲生陽】
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