主役のシドニー・スウィーニー(左)とグレン・パウエルがシドニーを舞台にドタバタ劇
<世界の興行収入が驚異の2億ドル超!なぜここまでヒットしたのか、日本にゆかりのあるウィル・グラック監督に独占インタビュー>
久しぶりに、ロマンチック・コメディー(ロマコメ)に大ヒット作が生まれた。昨年12月に全米公開された『恋するプリテンダー』(日本公開は5月10日)は、全世界の累計興行収入が既に2億1900万ドル(5月2日時点)超。ロマコメ作品としては『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(2016年)、『クレイジー・リッチ!』(2018年)以来となる2億ドル突破の快挙を達成した。
シドニー・スウィーニーとグレン・パウエルという今注目の俳優2人が、惹かれあいながらもすれ違う男女を演じる、泣き笑い必至の王道ロマコメ。日本にゆかりのあるウィル・グラック監督に、本誌・小暮聡子が見どころを聞いた。
◇ ◇ ◇――ロマコメながら、ヒットした理由をどう考える?
世界は「楽しい」映画を求めているんだと思う。この作品は、ロマンスと音楽の要素があるとても楽しい映画で、舞台は美しいシドニー、主役の2人も美しい。特に誰かと一緒に映画館で見てもらうと、さらに楽しめると思っている。この映画自体が、誰かと一緒に笑ったり泣いたり、歌ったりすることそのものだから。
いま、映画館に出向いて映画を観るというのは移動時間も含めれば5時間がかりのイベントだ。それだけのことをやるに値する映画は何かと考えたとき、大きな予算をかけたかとか、大がかりな仕掛けがあるとか、スーパーヒーローがいるかどうかということより、他の人と一緒に良い時間を過ごせたかどうかだと、私は思う。
コロナ禍を経て、いま私たちは「共通の体験」に飢えているんじゃないだろうか。この映画には、共通の体験が詰まっている。
――アメリカの映画館では、上映中に観客がみな笑ったり泣いたりしているのか。
そう。そして映画を見終わった人たちの様子をTikTokなどで見ると、劇中の歌を歌いながら映画館を後にしている。実際に足を運んで、みんなが特大のスマイルで劇場から出てくるのも目にした。
――本作は登場人物の心の内を描いてもいる。主人公の2人がだんだん心を開いて、自分にも周りにも正直になっていくプロセスが見る者の共感を呼ぶのでは。
物語の筋書き自体はシェイクスピアの戯曲『空騒ぎ』から来ているのだが、現代は本当の気持ちを語ることに臆病になり、自分の周りに殻を作ってしまいがちだとは言えると思う。主人公の2人は、互いに気持ちがあるのに誤解があるせいで相手を嫌いなふりをして......でも一度その殻が壊れると、自分自身が本当はどんな人間かを溢れるようにさらけ出し始める。
あともう1つ、人が憎しみ合うとき、憎しみと愛情は紙一重だということ。もともと愛がなければそこまで憎しみは湧かないから。これもこの映画の大きなテーマの1つだと思う。
シドニーのオペラハウス前で撮影するグラック監督(左)と主演のシドニー・スウィーニー――映画の舞台にオーストラリアのシドニーを選んだのはどうして?
これまでに『ピーターラビット』シリーズの2作品をシドニーで撮影したのだが、両方とも舞台はイギリスである体裁で撮らなければならなかった。でもシドニーはとても美しい街で、ビーチと建築物も素晴らしい。僕の家族もシドニーが大好きだから、また一緒に行きたかったというのも本音だ。
――『ピーターラビット』もそうだが、グラック監督の実の父親であるピーター・グラック氏(ニューヨークの著名な建築家)が今回の作品にもセリフ付きで出演していて、そのシーンが最高に笑える。ピーターはグラック監督の全ての作品に出演しているというのは本当?
父と、僕の子供たちは全ての作品に出演している。子供たちは5歳か6歳くらいのときからセリフ付きで出ているのだが、彼らは撮影されるのが本当に嫌い。人生最悪の日だって、いつも言っている。(編集部注:ピーターは、シドニーに向かう飛行機の中のシーンに登場)
――どうしてそんなに嫌がるの?
200人のスタッフたちの前で、自分の父親からこうしろああしろと言われることを想像してみて(笑)。
――それはちょっと恥ずかしい(笑)。グラック監督の母親は、ニューズウィークにも寄稿してくれているコロンビア大学名誉教授(歴史学)のキャロル・グラック先生だ。ピーターが映画の中で読んでいるのはグラック先生の本?
そう、父が映画の中で読んでいるのは母の著作だ。母の本は他のシーンにも登場している。
――グラック監督は幼少期に両親の仕事の関係で日本に住んでいて、大学時代に上智大学に留学していたそうだが、日本で映画を撮る予定は?
東京で映画を撮りたいとずっと思っている。当時は大学の学生寮に住んでいて、立地も東京のど真ん中なので最高に楽しい1年だった。
――日本語を話せる監督にぜひ聞きたい。原題『Anyone But You』につけられた邦題『恋するプリテンダー』をどう思った?
いつも邦題にはノータッチなのだが、内容に対してとても直球。どんな内容かをそのまま伝えるタイトルだなと思っている。逆に、あなたはこのタイトルをどう思った?
――正直、安っぽいなと......(苦笑)。でも内容はとても面白い。最後に、日本の人たちにメッセージを。
「ラブコメ」が好きな人、オーストラリアが好きな人、誰かと一緒に楽しい時間を過ごすことが好きな人は、ぜひ友人や大切な人と一緒にこの作品を見に行ってほしい。見終わった後は、幸せな気持ちで映画館を後にできるから。
――日本でも、上映中に声を上げて笑ってもいい?
もちろんイエス(笑)。僕が許可します。
タイタニックのつもりが!?主人公の2人がシドニーの海でおぼれそうになる
『恋するプリテンダー』 (原題:Anyone But You)
5月10日(金)より全国の映画館で公開
監督:ウィル・グラック 『小悪魔はなぜモテル?!』『ステイ・フレンズ』『ピーターラビット』シリーズ
出演:シドニー・スウィーニー「ユーフォリア/EUPHORIA」『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
グレン・パウエル『トップガン マーヴェリック』
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