苦しみという名の谷底に自ら進んで飛び込み、のた打ち回る男たちは痛そうだし、辛そうだし、苦しそうなのに、うれしそうにも見えてしまう。自己愛と共に死んでいく友をかっこいい儀式で、自己陶酔たっぷりにあの世へ送り出すマフィアたち。「こんなことしたくないんだ」と、裏社会に生きる運命を呪う背中は、切実さに加え、修学旅行前の少年のようなワクワク感が漂う。「愛する女性を命をかけて守る!」と誓う言葉にうそはないけれど、守れる俺のことも大好きなんだろうな。

 「男性」という生き物を極めて冷静に見つめ、美学と絆に喜々として縛られる彼らの愛らしさを、マフィア映画で表現する唯一無二の映画監督ジョニー・トー。「エレクション 死の報復」の日本初公開を祝し、「エレクション 黒社会」を含む過去作3本も特集上映します。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で5月25日から

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。