全国で10しかない空港のない府県のひとつ、埼玉県の自治体で空港建設の構想が持ち上がっている。といっても、埼玉県単独ではなく、同じく空港がない県の群馬県の自治体との共同。両県境の10市町による勉強会で経済発展策のひとつとして議題に上がっているという。実現可能性は未知数ながら、参加市町からは「地域経済発展の起爆剤になることが期待できる」との声が出ている。
空港構想は埼玉県の深谷、本庄両市、美里、上里、神川の3町と、群馬県の前橋、高崎、伊勢崎、藤岡の4市と玉村町の計10市町でつくる「上武連携構想」が検討している。
埼玉(武州)と群馬(上州)をまたぐこの地域は関越自動車道、北関東自動車道、国道17号や上越新幹線といった交通の結節点となっていることなどから、経済の面でも結びつきが強い。上武連携構想は、地域のさらなる発展を目指し、医療や治水、経済などの分野で、より一層連携を深めていこうとしている。
この地域は空港へのアクセスが悪く、前橋市は「日本一空港が遠い県庁所在地」などといわれることもある。
こうしたなか、空港構想は地域の経済発展策のひとつとして俎上に載り、令和5年11月の第2回勉強会では国土交通省航空局幹部を招いている。関係者によると、この勉強会では空港整備の意義や、羽田、成田両空港のバックアップとしての機能のほか、空飛ぶ車についての意見が出たという。
参加自治体の関係者は「連携のなかで、空輸ができるようになれば既存の産業発展や新たな産業誘致などの面でメリットがあるという話があり、空港構想が持ち上がった」と説明する。さらに、「今はまだ勉強の段階で具体的な話はないが、空港構想を盛り上げていこうという機運はある」としている。
上里町の山下博一町長は町のホームページで空港構想に触れ、「『上武』と呼ばれるこのポテンシャルの高い地域に空港が誘致できれば、まさに経済発展の大きな起爆剤となることが期待される」と記している。
第3回の勉強会は7月ごろに開催予定で、空の物流がテーマになるという。
埼玉県の空港をめぐっては、平成2年に当時の畑和知事が埼玉、栃木、群馬、茨城の4県にまたがる渡良瀬遊水地に空港を建設することを提唱したが、立ち消えになった経緯もある。
国土交通省によると、現在国内にある空港は97。このうち一般的にジェット旅客機が離着陸できるとされる2千メートル以上の滑走路を持つ空港は66ある。空港がないのは京都と埼玉、群馬、栃木、神奈川、山梨、三重、滋賀、奈良、岐阜の計10府県になっている。
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