町から姿を消していく書店を支援しようと、今年3月に発足した経済産業省のプロジェクトチームによる「車座会合」が17日、東京都内の書店で開かれた。斎藤健経産相と大手4書店の経営者、業界団体幹部らが出席。「文化創造につながる産業の基盤」と位置付けられた書店の未来について話し合った。
「ウェブ、図書館、書店が共存することが必要だが、書店だけが減っている。何かやれることはないか-」。会合の冒頭、斎藤氏はこう切り出した。
全国的に書店は減少傾向にある。日本出版インフラセンターの調べでは平成16年度1万9920店あった店舗は、令和5年度は1万927店まで落ち込んだ。別の調査では、全国の市区町村のうち約4分の1が「無書店」となっている。
東京商工リサーチの調べでは、平成25年から令和4年までの10年間で書店運営から772社が撤退したのに対し、新規参入は503社。担当者は「電子書籍やインターネットで注文する宅配サービスの進展が、特に品ぞろえの少ない小規模な書店に対しての打撃となっている」と説明する。
この日の車座会合に参加した書店経営者らは、書籍をゆったり読めるカフェなど、各自の取り組みをそれぞれ紹介。その一方で、国に対しては各種補助金の手続きの簡略化や、迅速な給付を求める声があがっていた。大垣書店の大垣守弘会長は「キャッシュレス決済は便利だが、手数料が高い。利用割合が増えるほど非常に大きな負担になる」と述べ、書店の「薄利多売」の実情を明かした。
会合は1時間にわたり、斎藤氏は「問題意識を共有することができた。ただ、問題は相当色々あり、整理する必要がある」と述べ、経産省として引き続きヒアリングを重ねる考えを示した。
これに先立って、自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」は昨年4月、提言をまとめている。ネット書店の送料無料化、過剰なポイント付与が実質的な値引きになっていることや、公共図書館のベストセラー・新刊本の蔵書が過度になることで「書店は不公正な競争環境にさらされている」と指摘している。
本の無料配送を実質的に禁じるフランスや、公共図書館の本の購入先を地域の書店を優先するよう勧告している韓国の取り組みにも言及しており、PTではこれらの提言も踏まえ、改善に取り組む。(織田淳嗣)
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