政府は、北朝鮮による日本人拉致問題を巡り、若者への情報発信に注力している。問題解決の長期化で詳しく知らない世代が増える中、「北朝鮮は拉致問題を風化させようとしている」(内閣官房幹部)との懸念が生じているためだ。ただ、理解の浸透は道半ばで、試行錯誤が続いている。
「皆さんと同じ年頃の女の子が拉致され、家族との絆が引き裂かれたことをイメージしてほしい」。政府は9日、拉致問題に関する「中学生サミット」を東京都内で開催。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の弟で、被害者家族連絡会(家族会)代表の拓也さんがこう訴えると、参加した中学生は真剣な表情で聞き入った。
同サミットは今年で2回目。全国から集まった中学生が、拉致問題を幅広い世代に伝えるための動画案について議論した。政府は、今回のアイデアを踏まえた広報動画を制作する方針だ。
政府は若年層の啓発活動として、教員志望の大学生向けの講座や、中高生向けの作文コンクールなども実施している。
2002年に被害者5人が帰国した際、その様子は大きく報道され、拉致問題に対する世論の関心は一気に高まった。ただ、それ以降に生まれた世代について、政府関係者は「当時の熱気を知る人たちと全然違う」と危機感を抱く。
このため、政府はX(旧ツイッター)での情報発信などSNS活用にも力を入れる。一方、深刻な人権侵害である拉致問題は「SNS映え」が重視される分野では発信しづらく、若者の間で普及するインスタグラムのアカウントは開設していない。担当者は「若い人のメディアにどう情報を載せるかが課題だ」と指摘した。
拉致問題に関する「中学生サミット」で講演する被害者家族連絡会代表の横田拓也さん=9日午前、東京都台東区
拉致問題に関する「中学生サミット」で講演する被害者家族連絡会代表の横田拓也さん=9日午前、東京都台東区
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