自民党は岸田文雄首相の後継を決める9月の総裁選を政権浮揚のきっかけとしたい考えだ。新総裁選出の「刷新感」をてこに低迷する内閣支持率の上昇を狙う。過去にはトップ交代により劇的に改善した例もあるが、派閥裏金事件で失った信頼を取り戻せるかは不透明だ。

岸田首相の退陣表明を受け、党内には次期衆院選をにらんで「英断だ」「これで支持率も上がる」と安堵(あんど)する声が漏れた。実際、各種世論調査で新内閣発足直後は支持率が大幅アップする傾向がある。

時事通信の調査によると、2021年の前回総裁選で岸田氏が選出され、組閣した後初めての内閣支持率は40.3%。前任の菅義偉首相の退陣表明前から11.3ポイント増えた。自民は苦戦必至とみられた直後の衆院選で、国会運営の主導権を握れる「絶対安定多数」の261議席を確保した。

支持率の上昇ぶりとしては、01年に首相の座に就いた小泉純一郎氏のケースが特に目立つ。森喜朗首相の退陣表明を受けた総裁選で「自民党をぶっ壊す」と宣言し、橋本龍太郎元首相らに圧勝。ワンフレーズで明快に訴える手法は「小泉旋風」を巻き起こし、支持率は森内閣終盤の9.6%から72.8%まで跳ね上がった。

07年の安倍晋三首相(第1次政権)から福田康夫首相への交代直後は18.6ポイント上がり、翌年に福田氏から麻生太郎首相に代わった際は15.0ポイント上昇。菅氏が安倍氏から政権を引き継いだ20年は18.5ポイント増えた。

民主党政権も例外ではない。鳩山由紀夫氏の後継に菅直人氏が選ばれた10年の代表選直後は22.1ポイントのアップとなり、翌年に菅氏から野田佳彦氏に代わった時は36.8ポイント増のV字回復を遂げた。

もっとも、裏金事件による逆風は強く、09年の自民党下野の頃と同程度とみる向きも多い。今年4月の衆院3補欠選挙で自民は全敗を喫した。ある中堅は「新しい『顔』にすれば政治とカネの問題は忘れてもらえる、というのは大間違いだ」と警戒する。

◇立民「代表選効果」も焦点

立憲民主党は来月23日に代表選の投開票を控える。現時点で枝野幸男前代表が出馬を表明し、泉健太代表も再選を目指している。「第3の候補」を模索する動きもある。

ただ、自民総裁選に注目が集まり、埋没する事態への懸念が根強い。21年の前回代表選前後、立民の支持率は5.4%から5.0%へ微減となり、「代表選効果」は見られなかった。論戦を通じて野党第1党の存在感を示せるかが課題だ。

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