自民党総裁選が12日に告示される。立憲民主党の代表選も7日に告示され、選挙戦が展開されている。毎日新聞の全国世論調査で、自民党総裁選で誰が選ばれてほしいか尋ねたところ、石破茂元幹事長(29%)が2位の小泉進次郎元環境相(16%)を大きくリードしてトップだった。しかし、自民支持層に限ると、石破氏と小泉氏の差はほぼなくなり拮抗(きっこう)。一方、立憲民主党の代表選でも、全体で1位だった野田佳彦元首相(27%)は立憲支持層に限ると、14%で2位の枝野幸男前代表に逆転される。各支持層と全国世論には「ギャップ」があるようだ。
世論と支持層
調査は8月24、25日に実施。携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯429件、固定521件の有効回答を得た。
総裁選の質問では、3位・高市早苗経済安全保障担当相(13%)、4位・小林鷹之前経済安保担当相(7%)――などと続き、代表選では、3位・泉健太代表(7%)、4位・江田憲司元代表代行(4%)――などと続いた(代表選には調査後に出馬表明した吉田晴美氏が立候補し、江田氏は出馬しなかった)。
これに対し、総裁選を自民支持層でみると、石破氏25%、小泉氏24%、高市氏19%、小林氏9%と数字が大きく変動。代表選は立憲支持層でみると、枝野氏37%、野田氏32%、江田・泉両氏6%と、トップの順位まで変わった。
「政治とカネ」が影響?
石破氏の「支持」を分析する上でポイントとなるのが「政治とカネ」だ。「総裁選でどのような分野の論戦に注目するか」と尋ねた質問で政治とカネと回答した人に限ると、41%が石破氏を選び、2位以下は全て1桁。政治とカネの問題に関しては、石破氏に期待が集まっていることがうかがえる。
総裁選の論戦の質問に「政治とカネ」と回答したのは全体の15%。物価対策(21%)、景気対策(18%)に続く3位だった。しかし自民支持層に限ると、上位3位は、景気対策(23%)▽外交・安全保障(21%)▽物価対策(20%)――と大きく変容。政治とカネはわずか4%で、一気にその他を除く7項目中7位に転落する。項目別に細分化するとサンプル数が少なくなるので詳しい分析はできないが、石破氏も小泉氏も自民支持層のうち景気対策や物価対策に注目する人たちから支持を得ている半面、少子化対策や社会保障と回答した人の中では小泉氏の方が優勢となるなど傾向の違いが見られた(外交・安全保障の回答者では、高市氏が最も支持されている)。
政治とカネへの議論の注目度合いの違いが、自民支持層と全国の世論との違いに大きく影響しているといえそうだ。自民の中堅議員は「石破氏は政権への批判的な発言を繰り返し人気や期待を得てきたが、党内からは『きれいごとを言っているだけだ』と反発する声もある」と指摘する。
「逆転」の理由
一方、立憲の代表選。立憲、共産、公明党を除く各支持層に加え、無党派層でも野田氏への支持が最も多く、立憲の若手議員は「首相の実績から野田氏に期待する声が大きい」と話す。では、立憲支持層に限るとどうか。
注目する論戦の分野の質問で立憲支持層に限定すると、政治とカネが31%とトップになり、物価対策20%、景気対策12%などと続いた。総裁選の議論の質問ではあるが、立憲支持層で政治とカネに注目する人たちから野田、枝野両氏とも支持を集めており、差は見られなかった。
ただ、物価対策と回答した人の中では枝野氏の方が、景気対策と回答した人の中では野田氏の方が支持を集める傾向にある。立憲支持層の中では相対的に物価対策の関心が高いため、枝野氏が逆転しているようだ。立憲の若手議員は「枝野氏は立憲の創始者である上、よりリベラル色が強いイメージがあり、物価対策など生活支援を進めてくれるという期待があるのではないか」と指摘する。
また、野田氏は旧民主党が下野した2012年衆院選時の首相。「野田氏を『議席数を減らし民主党政権を終わらせた戦犯』と思っている立憲関係者は多い」(旧民主党に所属していた野党議員)といい、立憲支持層と全国世論の間で、野田氏に対する期待への温度差がある可能性がある。
総裁選、代表選は第1党、第2党のリーダーを決める選挙。投票権は党所属議員や党員らに限られているが、その結果は政治の行方を左右するものであり、選挙の論戦に注目したい。【野原大輔】
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