岸田文雄首相の後継を決める自民党総裁選は12日に告示され、27日の投開票に向けて15日間の選挙戦が始まった。推薦人が必要な立候補制となった1972年以降では過去最多の9氏が立候補を届け出た。派閥の裏金事件を受けた党の信頼回復や政治改革に対する姿勢が問われる。一方、9氏とも安全保障政策の大転換などで「国会軽視」と批判されてきた岸田政権の政治手法や政策の問題点を検証する姿勢を示さないまま、本格的な論戦に入る。(坂田奈央、中根政人)

◆過去最多9氏が立候補、決選投票になる可能性大

 立候補したのは以下の9氏。
高市早苗経済安全保障担当相(63)
小林鷹之前経済安保相(49)
林芳正官房長官(63)
小泉進次郎元環境相(43)
上川陽子外相(71)
加藤勝信元官房長官(68)
河野太郎デジタル相(61)
石破茂元幹事長(67)
茂木敏充幹事長(68)  女性候補は2021年の前回選と同じ2人となった。  総裁選は、367人の国会議員票と党員・党友による地方票367票の計734票を争う。9氏の立候補によって国会議員票が分散し、上位2人による決選投票となる公算が大きい。

◆物価高対策、選択的夫婦別姓制…問題山積み

 9氏は党本部で所見発表演説会に臨み、外交・安保政策や経済政策、人口減少問題、災害対策、改憲など自身が重点的に掲げる政策を訴えた。裏金事件を踏まえた「政治とカネ」の問題への対応策については、政治資金の透明化や政策活動費の廃止・使途公開、政治資金収支報告書への不記載相当額の国庫返納などの必要性を訴えた。

自民党本部で開かれた総裁選候補者の所見発表演説会=東京・永田町で(佐藤哲紀撮影)

 総裁選で選出される新総裁は、次期衆院選で自民の「顔」となる。選挙戦では、解雇規制の緩和など労働市場改革のあり方や選択的夫婦別姓制度の導入の是非も争点に浮上。物価高を含めた経済政策も主要議題となる。  約3年間の岸田首相の政権運営に関し、12日の演説会で「直面する困難な課題に向き合ってきた」(小林氏)「功績や、多大な努力に心から敬意を表す」(石破氏)との言及はあったものの、課題を直接指摘する発言はなかった。  岸田政権では、国会での十分な議論がないまま、歴代政権が否定してきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を認め、防衛予算の大幅増や殺傷兵器の輸出解禁で「専守防衛」の形を大きく変質させるなど、安倍政権から続く安全保障政策の転換をさらに進めた。  裏金事件を巡り、岸田首相は自らが率いた旧岸田派の解散や、衆院政治倫理審査会に出席するなどの対応をとったものの、事件の原因究明などには主体的に取り組むことはなかった。 

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