およそ70年前に確認された公害「水俣病」。

一審で患者たちの救済を命じた裁判の控訴審がはじまり、国側は一審判決の取り消しを求めました。

■再び救済を求め声を上げなければならない原告

25日正午ごろ、大阪高等裁判所の前に集まった原告たち。

改めて、救済を求め声をあげました。

【原告 前田芳枝さん】「原告はみな高齢で残された時間がないんです。すべての水俣病患者を、被害者を救済するためにも一刻も早い解決を望んでいます」

1956年に公式に確認された「水俣病」。熊本県水俣市にある化学メーカー“チッソ”が排出したメチル水銀によって、魚介類が汚染されたことで発生しました。

手足がしびれたり、転びやすくなったりするのが特徴で、痙攣をおこして死亡した人も多くいました。


■「魚を食べただけ…」原告のひとりの女性

原告の1人、大阪府島本町に住む前田芳枝さん(75)。

【原告 前田芳枝さん】「しんどい…ごめんなさい。こんな字しか書けないんですよ」

鹿児島県に住んでいた10代のころから、手が震える症状に苦しんできました。

【原告 前田芳枝さん】「魚を食べただけなんです。だけどこんな体になってしまった。それをどう取り戻せるんですか。どうしてくれるんですかって」

■救済に後ろ向きな姿勢を続ける国に賠償を命じる判決

水俣病をめぐる裁判がいまなお続いている背景には、国などが救済に後ろ向きな姿勢を続けてきたことがあります。

患者たちは何件も裁判を起こし、2010年から新たな救済制度が始まりましたが、条件が厳しく、申請も2年ほどで打ち切りに。

2014年に水俣病と診断された前田さんのように、救済されない人が相次ぎました。

前田さんを含む原告は2014年から裁判を起こし、2023年9月、大阪地裁は原告全員を救済対象と認め、国などに合わせて、およそ3億5000万円の賠償を命じました。

【原告 前田芳枝さん】「私たちは今日の日を指折り数えて待っておりました」

■一審の判決を不服として国が控訴

しかし、国などは判決を不服として控訴。

25日、はじまった控訴審で国側は「一審で全員を水俣病と判断した根拠となる研究について、誤解や誤りがあり、一審判決は取り消されるべき」と主張。

一方、原告の女性は「水俣病の症状で仕事を辞めることになり悔しい思いをした」と訴え、弁護士は「一審判決の根拠に誤りはなく、判決は妥当」と主張しました。

【原告 前田芳枝さん】「被告側がことごとく(一審の判決の)全てを覆す。何を言ってるのって、私は一つ一つの言葉が信じられない。一日も早い解決を望んでいる」

(関西テレビ「newsランナー」2024年9月25日放送)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。