裏金問題で自民党を離党した世耕弘成参議院議員が、10月27日に予定されている、衆議院選挙に和歌山2区から無所属で出馬すると表明しました。
和歌山2区からは、すでに自民党の二階元幹事長の三男が出馬を表明していて、自民党内部からは批判が続出しています。
■「ありえへん」と県連幹事長が憤り 世耕氏が“和歌山県第2区”から衆院選に出馬
【自民党和歌山県連 中村裕一幹事長】「そんなことは、ちょっとありえないという感じです」
7日、取材に対し憤りをあらわにしたのは、自民党和歌山県連の中村裕一幹事長。
批判の矛先は世耕弘成参議院議員(61)です。
【自民党和歌山県連 中村裕一幹事長】「集会とかで、“でるでる感”を出してましたけど、(世耕議員は)『和歌山のため』っておっしゃいますが、和歌山のためであれば、参議院議員としてもご活躍できるはずでありますから…」
背景には世耕議員が5日、開いた記者会見で、次期衆院選へのくら替え出馬を表明したことにあります。
【世耕弘成 参議院議員】「現在は参議院議員でありますが、この衆院選に和歌山県第2区から出馬することを決意しました」
世耕議員は自民党の参議院幹事長を務めていましたが、派閥の政治資金問題で離党勧告を受け、ことし4月に離党していました。
なぜ、参議院ではなく衆議院での出馬を決めたのか理由を問われると。
【世耕弘成 参議院議員】「これだけ大きな挫折を味わっている中で、あえて厳しい選挙にチャレンジしたいという思いで、今回、和歌山2区からの出馬を決断した。古くからの支持者等のお力を借りながら、手作りで戦う選挙になるだろう。応援弁士を誰も呼べないと思うので、私1人でミカン箱の上に立って戦う」
■和歌山2区は自民党の重鎮・二階元幹事長の地盤 息子が引継ぎ自民党公認で出馬表明
世耕議員が出馬を決めた和歌山2区といえば…。
【二階俊博候補当時(当時44)】「地元の皆さんよろしくお願いします。ありがとうございました。行ってきます!」
1983年の初当選以来、地元和歌山のインフラ整備や災害対策などに力を注いだ、自民党の重鎮・二階俊博元幹事長。
今回の選挙から、区割りの変更に伴い、和歌山2区には二階元幹事長の選挙区「旧和歌山3区」が含まれる形になります。
二階元幹事長は、派閥の政治資金パーティーの収入の一部が、政治資金収支報告書に記載されていなかった問題の責任を取り、衆議院選挙への不出馬をすでに表明しています。
(Q.不記載の責任をとられた?それとも年齢の問題?)
【自民党 二階俊博元幹事長】「年齢に制限があるか!」
(Q.いや年齢制限はないですけど、お年を考えてかと…)
【自民党 二階俊博元幹事長】「お前もその年が来るんだよ!」
初当選からおよそ40年…。13回の当選を誇る強い地盤を引き継いだのは、三男の伸康さん(46)。
自民党公認で、すでに出馬を表明しています。
■「幹事長はカンカン」 公認候補への対抗の世耕氏へ自民党から厳しい声
6日、湯浅町で行われた「伸康氏を励ます会」では、地元の人たちに支援を呼びかけました。
【自民党公認 二階伸康さん】「私はなにも親父の後を継がなければいけないとか、そんなことはどうでもいいんです。本当にどうでもいいです。私は軸足を和歌山に置いて、皆さんの声を、国へ届けたい。もう届けるだけじゃ足りない。響かせたい」
圧倒的な知名度を誇る世耕議員の出馬については…。
【自民党公認 二階伸康さん】「どなたが出てこられても、どういう構図の情勢になっても、私の思いを有権者に伝えることは、何も変わることはありません」
集会では、世耕議員が離党勧告の処分を受けて離党した後に、党の公認候補に対抗して、立候補を表明したことに対し、厳しい声が続出しました。
【吉井和視県議】「きのう夜遅く帰ってテレビ見たら、世耕さんが記者会見してた。『世耕さん』って名前、金輪際言わないようにしますけどね。カンカンですね(森山)幹事長は」
【鶴保庸介参院議員】「この人(伸康氏)が、公認候補として出られた後に、立候補されてるわけでしょう。それ、ちょっと待ってくれよ」
当選した場合、復党するのではないかという声もあがる中、こうした批判に対し世耕議員は…。
【世耕弘成参院議員】「党本部の幹部の中にも、かつて無所属で公認候補と戦って、復党している方もたくさんいらっしゃる」
■両候補のポスターあちこち 公示前から“波乱の選挙戦” 「このままでいいのか」と有権者は戸惑い
公示前から“波乱の選挙戦”が予想される和歌山2区。
伸康氏の地元・御坊市を取材すると。
【記者リポート】「二階伸康氏のポスターが貼られているんですが、道路を挟んで反対側には世耕氏のポスターも貼ってあります」
両候補のポスターがあちらこちらに。
有権者からは戸惑いの声が聞かれました。
【有権者(80代)】「複雑ですね。世耕さんは裏金問題でああいうことになったし。二階さんも同じだけど。息子さんがどういう人か分かりませんので、今のところ決めかねています」
【有権者(60代)】「(二階議員の)業績は地元にとっては大きいと思うけど、それが世襲もあり、責任をとって辞任した(不出馬)というのもあり、しっくりしない。今まではまず自民という感じだったけど、このままでいいのかと感じますね」
さらに和歌山2区では、7日、新たに立憲民主党の公認で和歌山市議の新古祐子さん(52)が出馬を表明しました。
【立憲民主党公認 新古祐子さん】「裏金問題、世襲問題など真面目にコツコツ働いている人が報われる社会にしたい。女性活躍支援といいながらも、実際、政治をやっているのは、おじちゃんばっかり」
他にも共産党公認の楠本文郎さん(70)も出馬を表明。
【共産党公認 楠本文郎さん】「どう考えても、この政治とカネという問題は、どの角度から見ても、きちんと国民に説明できる、そういう状況にならないといけないのではないか」
さらに、無所属の本間奈々さん(55)も出馬を表明しています。
保守分裂の激しい選挙戦が予想される和歌山2区。
有権者はどのような判断をするのでしょうか。
■太田昌克氏「裏金問題の後始末はまだ終わってない」と指摘 有権者はどう判断するのか
世耕氏は「あえて厳しい選挙にチャレンジしたい」と話しましたが、このくら替え出馬の真意はどこにあるのでしょうか。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「世耕さんは元々くら替えを狙っていて、これまでも何度かこういう話はでてきていました。今回、二階さんが退かれるというタイミングで、新人の息子さんがいるから勝てると思ったかどうか分かりませんが、離党してある種チャンスだと思って、出られているところはあると思います」
「一方で、復党をめぐっては、県連の関係者によると、世耕さんと自民党の間で、和歌山2区ではなくて、1区の方で当選すれば、復党という話もあったそうです。ただこれは世耕さんから蹴っています。あえて2区の方にきているということで、県連関係者もみんな驚いているという話もありました」
これを有権者が、どう判断するかということになります。
番組コメンテーターの共同通信社編集員の太田昌克さんは「有権者の方が、『しっくりしない』っていうことをおっしゃっていましたが、ここに尽きると思うんですよね。離党勧告、裏金問題で離党した世耕さんが、こういう形で出てきたと。かたや二階さんも、二階派で大きな裏金があったわけです。その中で『どういうふうな選択をすればいいんだ』と、有権者の皆さん迷われるのは当然だと思うんですよね。やっぱりここからも裏金問題の後始末はまだまだ終わってないということがよく見えてきます」と話しました。
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月7日放送)
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