15日公示、27日投開票の衆院選に向け、山下真・奈良県知事が維新県総支部の代表として立候補予定者とともに街頭を走り回っている。2023年春の就任以降で県内初の国政選挙とあって、連日早朝から3選挙区の駅前でマイクを握り、軽快な足取りで自ら広報チラシも配る張り切りぶり。知事本人と気付いて驚いた様子で足を止める通行人も多く、県総支部幹部は「やはり党公認知事の存在感は抜群。これが候補者の票につながれば」と期待を寄せる。
8日午前6時半過ぎ、まだ陣営スタッフも到着していない近鉄大和八木駅前にスーツの上着を片手に抱えた山下氏が現れた。
遅れてきた候補予定者と並んで「奈良県知事の山下真です。日本維新の会をよろしくお願いします」と声をかけると、足早に通り過ぎようとした通行人は驚いた様子でチラシを受け取った。別の通行人にチラシの受け取りを断られた県議の松尾勇臣・県総支部幹事長は「私なら『県議の松尾です』なんてよう言えん。知事はさすがの知名度や」と思わず苦笑いを浮かべた。
無所属の知事が続いた県内では、国政選で知事が党派色を明確にして活動するのは異例。維新は今回、3選挙区全てに候補予定者を擁立しており、うち1、2区は県外からの「落下傘候補」であることから、党のイメージや勢いが大きく得票を左右するとみられる。単純比較はできないものの、23年の知事選において、奈良1~3区の全3地域で自民系候補を上回る票を得た山下氏の同伴は大きな追い風になるという。
10日早朝に山下氏と五位堂駅前に立った候補予定者は「昨年末くらいから、街頭でも『吉村さん(吉村洋文共同代表)のとこ』から『山下さんのとこ』と声をかけられるようになった。知事の実績が認められつつあるのでは」と手応えを話す。
ただ、党として推進してきた万博の経費増や前兵庫県知事のパワハラ問題などで、街頭での逆風は強いと候補予定者らは口をそろえる。8日も「維新は応援できへん」と山下氏に直接声をかける人がいた。陣営幹部の1人は「維新のこれまでの人気の上下は党名変更や他党との連携など政治と関係ない戦略ミスだったが、今回は政策や人選のミス。イメージ戦略頼みでは乗り切れない」と気を引き締めている。【稲生陽】
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