自民党の政権公約を発表し、記者の質問に答える小野寺五典政調会長=同党本部で2024年10月10日午後3時21分、平田明浩撮影

 自民党は10日発表した衆院選公約で、柱の一つとして「地方を守る」と題し、地方創生や農林水産業の振興に紙幅を割いた。初代の地方創生担当相を2015年から務めた石破茂首相(自民党総裁)は9日の衆院解散後の記者会見で、この解散を「日本創生解散」だと命名した。岸田文雄前首相の路線継承を基本としつつ、地方重視を独自色としてアピールしたい考えだ。

 公約では「地方創生2・0」を始動させるとし、地方創生の交付金の倍増や、首相を本部長とする「新しい地方経済・生活環境創生本部」創設を明記。デジタルを活用した地方活性化や、輸送手段の確保が困難な地域でのライドシェアの取り組み強化などを盛り込んだ。

 農林水産業は「国の基」だとし、食料の安定供給のため、農業生産の増大を掲げた。主食の米については、将来にわたって安定運営できるように水田政策を見直すとした。

 憲法改正については、緊急事態条項の新設や9条への自衛隊明記、合区解消など党の改憲案4項目を提示。「改憲原案の国会発議を行い、国民投票を実施し、憲法改正を早期に実現する」とこれまでの党の方針を継承した。首相自身は、戦力不保持を定める9条2項を削除し、国防軍を明記すべきだとの立場だが、触れなかった。党内の議論の積み重ねを重視した模様だ。

 エネルギー政策に関しては、原子力を「脱炭素効果の高い電源」と位置付け、「最大限活用する」と記した。21年衆院選で掲げた「可能な限り原発依存度を低減する」との文言は消えた。公約の具体的な政策を示した政策集では、次世代革新炉の開発・建設に取り組む考えも示した。

 公金受取口座の誤登録などさまざまなトラブルが相次いだマイナンバーを巡っては、政策集の中で、マイナンバーカードのスマートフォンへの搭載や健康保険証としての利用などを推進するとした。マイナ保険証への切り替えに伴い12月に廃止予定の従来の健康保険証には触れなかった。

 取り組みの遅れが指摘される女性政策に関しては、「33年までに我が党の女性議員の割合を、現在の12%から30%まで引き上げる」と主張。女性の所得向上や男女間賃金格差の是正に向けてリスキリングの促進や、賃金差異の「見える化」を進める考えを示した。【遠藤修平】

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